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OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか

OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか<32>
OC/LEPは私のメンター

第829号


Joyレディースクリニックくもじ(沖縄県那覇市) 大島 教子

「女性医学」へ挑戦

 2016年に地元沖縄でオフィスギネコロジーのクリニックを開業して7年がたちます。それ以前、私は大学病院で周産期医療に従事しておりましたが、開業に際して分娩は扱わず「女性医学」の臨床に挑戦することにしました。開業して2年近く閑古鳥が泣くなか、夏のバケーションシーズンは緊急避妊薬(ECP)が月40個以上出て大切な収入源となっており、呑気にも沖縄の観光立県ぶりを実感していました。ECPとOC処方は開業初期の大切な収入源でしたが、コロナ禍到来とともにECPの処方数は激減。これまた観光客数とのリンクを再認したものです。

OC/LEP処方の初心者

 OCが日本で承認された1999年頃、私はバイト先でたまにOCを処方していた程度で、血栓症による死亡例がマスコミなどでセンセーショナルに取り上げられた後は処方に消極的になり、10年以上OC/LEPの処方機会はありませんでした。開業時にはジェネリック製剤と連続服用タイプは未発売だったものの、数種類のOC/LEPは揃っている状況でしたので、女性ヘルスセミナーなどへ参加しては付け焼き刃で知識をアップデートし、恐る恐る処方を始めました。今から振り返ると、全く患者さんに寄り添う姿勢のない、初心者の処方の仕方だったと思います。OC/LEPの良さを説明する前に、副作用の血栓症の説明を強調するあまり、当然、服薬を敬遠する方は多く、また処方後の悪心や不正出血などのトラブルに対する対処も未熟で、服薬継続率も低かったわけです。処方症例のイメージがはっきりしないなか、海外生活から帰国された方のOC/LEPの服薬継続希望での受診を度々経験し、海外での普及ぶりを感じていました。

中級者へ成長

 ジェネリックの発売後、処方のハードルが下がり処方数が増え、月経痛やPMSから解放された方の多くの笑顔を見る機会が増えたことで、OC/LEPの素晴らしいパワーを実感することになります。痛みがひどく出勤できなかった方が「楽になりました!」とうれしそうに話す姿に、こちらも喜び倍増です。最近は友人から勧められたり、自身でネット検索してLEPを試してみたいという女性が増えてきている印象です。また、当初はこわごわとしていた中高校生への処方にも慣れ、今では受験生には「早めにLEPを試して、受験日はベストパフォーマンスで臨みましょうよ」と自然に伝えることができるようになってきました。そして、40歳代のOC/LEPからのHRTへのシームレスな移行も増えてきました。

「女性のかかりつけ医」を目指す

 また、当院は性産業に従事している女性の受診も比較的多く、当初は彼女たちが中用量ピルで自在に月経調整をしながら仕事をしている様子を目の当たりにして驚きましたが、同時にたくましさも感じたものです。消退出血の仕組みを理解している方は、定期的に性感染症チェックを受け、婦人科医との距離が近く、主体的に自身の体の管理をされている女性が多い印象です。こちらからも、副作用低減のために中用量ではなく低用量ピルへの変更を提案、子宮がん検診、HPVワクチンや肝炎ワクチンの推奨も行っています。

 現在、私はOC/LEPの処方の実践を通して、開業医だからこそ可能な、より丁寧に女性に寄り添える医療を習熟している過程にいると感じます。これからもOC/LEPを上手に活用しながら「女性のかかりつけ医」のエキスパートを目指して修練していきたいと思います。


今月の人

大島 教子(おおしま・きょうこ)
1990年、獨協医科大学卒。聖路加国際病院で初期研修後、琉球大学病院、獨協医大学病院などで勤務。2016年、Joyレディースクリニックくもじ開業。


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