私が消化器内科の夫とともに開業したのは、1999年9月にOCが発売された半年後のことでした。開業後は予期せぬ妊娠をした女性と関わることが増え、中絶後の避妊教育の必要性を痛感する日々でしたが、OC服用を決心してくださる患者さんは思うように増えませんでした。転機は2003年の日本産婦人科医会主催の性教育指導セミナーへの参加、そして2005年の避妊教育ネットワークへの入会でした。日本の性教育とOC処方を牽引する先生方から学ぶ場を得て、学校での性教育講座に出向く機会が増え、日常診療でも必要な方にOCを届けることができるようになりました。
2008年に待望のLEP製剤が発売されました。日々の臨床では、鎮痛剤が効かずに月経の度に学校を休んでしまう方、過多月経で驚くほどの貧血になっている方も稀ではありません。子宮内膜症などの疾患がない「機能性月経困難症」にもLEPを処方できるようになってからは、そういった方のQOLはめざましく改善されるようになりました。
最近では、精神科に受診しておられる患者様の月経困難症と月経周期に伴う精神症状の変動に精神科医が気づき、LEPを勧めたうえで紹介して下さるケースもあります。OC/LEPの知識が他科の医師にも広まりつつあり、必要に応じて連携することで、より安全にフォローできるようになっています。
同じ院内で診療している内科に、慢性疾患で受診されている患者さんは「かかりつけ医」という意識をもって受診されています。一方、婦人科には、検診のとき、不正出血があったとき、お腹が痛いとき、腟炎かな? と思った時など、単発的に受診される方が多いかと思います。
避妊や月経困難でOC/LEPを処方する患者さんには、定期的に会うことができ、女性のヘルスケアの「かかりつけ医」になるきっかけとなります。私はマンモグラフィや超音波での乳がん検診も行っているので、OC/LEP卒業後も、子宮と乳腺両方の検診や相談をしていただける関係性を築くことを心がけています。そうすることで将来的に、不妊、周閉経期以降のトラブルへの早期対応、がんの早期発見などにつながることが期待できます。
最後になりますが、静岡県産婦人科医会が担当するセミナーのPRをさせていただきます。2023年7月30日(日)に静岡市で、「日本産婦人科医会主催 第45回性教育指導セミナー全国大会」を開催いたします。テーマは「多様性に寄り添う性教育」で、様々な多様性を考慮した性教育について考えていただく内容になっております。後日オンデマンド配信もございます。是非、多数の方のご参加をお待ちしております。