日本でOCが承認された1999年、「思春期の応援団になりたい」と産婦人科に進んだ私は専門医を取得し、中学校での性教育講話デビューを果たしました。これまでもこれからも私の医師人生はOC/LEP(以下ピル)とともにあります。過去2回担当した連載シリーズを振り返って、その意をさらに強くしました。
田舎で貧乏、家父長制が根深く残り、女性の転出超過率トップ県…だから山形が嫌い、と言って許されるのは若者だけ。愚痴ってないで産婦人科医師としての役割を果たそう! 目の前の患者さん、日本一働き者の女性たちが元気になれるように「我慢しない、頑張らない」と言い続けました。月経痛があれば当然、困っていない人でも(実はみんな我慢している)今すぐ妊娠を希望するまで排卵はお休みさせた方が良い、だからピルです。
一人の女性がいいね! と呟けば、ピルでハッピーの輪はどんどん広がります。性教育講話をきっかけに来院してくれた中高校生の7割強がピルユーザー。半信半疑で付き添ってきたのに、気付けば自身もピルユーザーとなったママ達は、数年後にはホルモン補充療法(HRT)へ移行し、夫婦円満、嫁姑問題、介護負担も軽減されます。
今や山形はLEP売上全国第5位(図1)、これで娘達への面目を少しは保てたでしょうか。
図1 2019年都道府県別LEP剤の売上シート数
(15~49歳の女子人口千対のシート数)
スポーツドクターを取得すると、さらにピルの輪が広がりました。女性アスリートの健康管理、指導者講習、相談窓口の設置(図2)…あらゆる場面で「ベストコンディションでベストパフォーマンス! そのためにはピルの活用を」と旗を振りました。スポーツ界の価値観や慣習により、アスリート自身がハラスメント被害を自覚しにくいという報告があります(日本スポーツとジェンダー学会)。すなわち月経くらいで練習を休むな、月経が止まるくらい練習をしろ、といった指導が横行していた時代はそう昔ではありません。
東京五輪・パラ開催前に様々な競技団体で暴力やハラスメントが明らかになり、ジェンダー平等に反する発言によりトップが交代するという事態にまで至りました。これらの反省点を生かし、スポーツ界のみならず教育界、医療界、あらゆる社会活動において主体者中心(例えば、患者さんセンタード)の考えが浸透したならば、全ての人にとって人生は自分自身のものになると考えます。
この夏山形で、日本産婦人科医会性教育指導セミナー全国大会を開催します(図3)。私はピルというツールを用いて、患者さん、保護者、学校の先生方、先輩後輩、異業種の仲間たちとつながってきました。つながることで広がり、深まり、そして救われました。
セミナーでは異なった分野の7題の講演をオンデマンド配信し、7月17日には山形テルサにてワークショップを行います。私たち大人が、困った時辛い時に、周りの人に助けを求め支援を受ける力=受援力を備えてこそ、子どもたちの応援団になれるのだと思います。
図3 第44回日本産婦人科医会 性教育指導セミナー全国大会の開催案内