受診者の症状と精神的または生活背景の多様化は進み、受診者数も増えていることはおそらく全国的な傾向であろうと思われます。その中で精神科紹介をすべきか迷う方や、周囲とのコミュニケーションがうまくいかない方が割合としても実数としても増えてきています。周囲は精神科受診を勧めたいが、本人の拒否によりさらに人間関係が難しくなったケースなどで月経周辺症状があったときには、最後の駆け込み寺として産婦人科を選んでくださっているケースが増えている印象があります。
昨年来のコロナ騒動を代表とする精神的あるいは経済的な不安で、メディアも現実も不安が増幅しています。ずるい世間はそれを怒りに変えて吐き出すことで一時期のストレス解消としているのも無理からぬことでしょうか。おりしも国政選挙報道が盛んにされていましたし、皇室の御結婚の話題も含め、報道という名の批判や中傷が目に入らない日はありません。一部の正義という名のその理不尽は弱いところにたまっている。弱い人はその悩みを処理することが許されず、時に根性論で片付けられる。誰かに相談しようとしても誰も余裕がないから真摯に相談に乗ってくれない。産婦人科外来受診者には、そんな背景が見え隠れします。私たちにも、産褥の子育て期のケアも含めた精神的サポートが求められていると感じます。
自分の人生を自分で決めたくてOC処方をご希望になる方は、その功罪を説明し処方することが私たちの仕事です。単なる月経困難症や何かの都合で月経の周期を移動させたい方にも同様の対応が可能です。
一方で前述のように多面的な悩みを抱えた末の症状の一つとして月経関連の症状での受診の場合、患者さんから試されている感覚を覚えます。今まで傲慢な他人に傷つけられてここまで来た。お前なんかに私の悩みがわかってたまるか。そういう影をちらつかせながら「よろしくお願いします」と少し寂しい笑顔で挨拶されるとこちらも緊張の度合いが高くなります。限られた診療時間のなかで「つらかったですね」「よく辛抱してきましたね」などと分かったような口をきいても、本当に傷ついた人たちには聞き飽きた言葉でしかない場合が多いです。外来にいらっしゃった方もこの医者を信じていいかどうかを迷っていらっしゃるときに、LEPが助けてくれる場面を経験してきました。まずは「いろいろお悩みのご様子とお見受けしますが、私は産婦人科医ですので、あなたを苦しめている月経周辺の症状を軽くすることからあなたのお役に立ちたいです」というアプローチをし、懐疑的なお顔の方に近づく。もちろん金銭的な負担やお薬自体の功罪を説明します。この頃には“私は患者”というお顔になっていらっしゃるので、そのままLEPによる症状緩和を経験していただくと、とりあえずはいったん信用していただけたかなと安堵できます。以後は必要なら信頼できる精神科を紹介するか、もしくは自分でフォローし、生活への適応のお手伝いをしているのが現状です。
OC/LEPも日本家族計画協会の皆様をはじめとした各方面のご尽力により社会認知度が上がり、副作用説明も含めずいぶん使いやすくしていただきました。この武器を利用させていただき、より良い医療を提供したいと心を新たにしております。