OCが認可された1999年6月より1か月前、昔から興味のあった東洋医学の漢方・鍼灸治療を専門としていましたが、大学附属病院での診療には漢方治療には限界があると考え、千葉県八千代市に煎薬まで扱えるクリニックを開院いたしました。“露仙堂”は曾祖父まで代々続いてきた賀川流産科の産院の名称であり、開院の際は漢方専門も含め名称継承しようと思っていました。
開院後は主に漢方治療や更年期、婦人科の方が中心で、OCは避妊以外ほとんど処方せず、新聞に蓮尾豊先生(あおもり女性ヘルスケア研究所所長)のクリニックが月に2,000以上処方された記事を見つけ、全国にはすごい先生がいるという程度の認識でした。
当初は患者数が少なく経営が危ぶまれていましたが、少しずつ患者数も増え年齢層も低下し、大学病院であまり経験しなかった思春期の患者が増えてきました。若年層では10代の妊娠や予期しない妊娠、性感染症が多い現実を目の当たりにし、婦人科医としてどうするべきかを考えるようになりました。性教育など興味のなかった私ですが、市内の中学校から性の講話依頼があり、同じ頃八千代市より思春期の性に取り組む会議の発足の相談が来ました。
手探り状態で始まった性の講話ですが、蓮尾先生の千葉での講演をきっかけに避妊教育ネットワークに参加し、全国の性について熱い先生方から多くの資料を提供していただき勉強をさせてもらう場を得ました。婦人科医としての知識だけでなく、性を通じてこれまでの自分自身の人生を改めて考える良いきっかけになったと考えています。
現在では市内全ての中学校に講話できるようになりました。同市を巣立っていく生徒に一定の知識を持って卒業してもらうことを目標とし、OC/LEPの効能効果を伝えることは婦人科医の使命と考えるようになりました。千葉全県を挙げて性の講話を広めていくことが今後の課題です。中学校・高校での講話は思春期の患者の来院を促し、OC/LEP処方につながってきました。
地域の中学校で性の講話をする栁堀氏
八千代市思春期ネットワーク会議は「思春期の性と生」の取り組みを目的に2006年に発足し、メンバーはPTA・教育・行政・医師会などで構成されています。性教育を単なる「性知識の伝達」だけに終わらせることなく、広く「人間教育」として捉えています。会議の発足以来会長をさせてもらっています。小さなコミニュティですが、他職種とのさまざまな立場での意見交換は大変勉強になりました。大人向けのシンポジウムの開催や、生徒へのリーフレット作成、地域による性教育参考資料作成などの活動をしています。
2000年以上前の書物『黄帝内経(こうていだいけい)』素問(そもん)には、「上工(優れた医師)は未病を治す」とあります。まさにOC/LEPは未病を治すにふさわしいツールと考えています。月経困難症、月経周期の調節、避妊、にきびなどきっかけはさまざまですが、OC/LEPを服用することによりQOLが向上するとともに、女性に将来起こり得る子宮内膜症・卵巣がんの発症や、生体にとって有益な環境づくりに寄与していると考えられます。
今後女性の素晴らしい未来に貢献できるよう漢方・OC/LEPを大切なツールとして診療していきます。
八千代市思春期ネットワーク会議の様子