私は医師ではありません。医療関連の企業や団体のコミュニケーション活動支援を主な生業とする企業の一経営者です。日本家族計画協会北村邦夫先生より、「たまには異なる視点からの寄稿を」とのお話をいただきき、僭越ながら寄稿させていただく次第です。ご容赦ください。
私が低用量ピル(OC)と初めて関わりを持ち始めたのは、30年ほど前の1990年にさかのぼります。
日本でOCの輸入許可申請書を当局に提出した製薬企業の一社から、「ようやくピルが解禁になるから、これに備えてコミュケーション活動導入を検討したい」との相談を受け、活動案の準備や情報整理を進めていました。
しかし、その過程で当局の審議が凍結され、承認は先送りされました。その数年前からのHIV感染者の拡大懸念と、「1・57ショック」(89年の合計特殊出生率が1・57に低下)に起因する少子化現象が注目され始めたことなどが理由で、当社が準備を進めていたコミュニケーション活動支援もキャンセルされました。
「OCの普及→コンドームなどの避妊具使用減少→HIV感染拡大」、あるいは「OCで避妊の選択肢拡大→出産数抑制・減少→少子化に拍車」などの、極めて短絡的な論調がまかり通っていたことに、素人の私でさえ「?」な思いを抱いていたことを覚えています。
数年後、再びOC解禁の機運が高まり、97年6月、OCの輸入許可申請書を提出していた製薬企業9社で構成するOC連絡会学術広報委員会が、マスメディア、医療機関、一般消費者などに対するOCの啓発活動・広報活動を共同で推進するための「OC情報センター」を開設。当社がその事務局業務を担うことになりました。
99年6月承認〜9月発売に向け、WEBサイト構築、各種啓発資材制作、広報計画立案を進めました。
以降2013年3月まで、OC普及に向けたさまざまなコミュニケーション活動をお手伝いしました。
OC情報センターが行う活動の一環として、05年3月に「避妊教育ネットワーク」が設立され、その事務局業務も担当することになりました。年2回、全国に点在するメンバーが東京に集結し、さまざまな課題について討議する「産婦人科医のための女性保健医療セミナー(旧称避妊教育事例検討会)」運営や、メンバー同士が日々意見交換を行う場としてのメーリングリスト管理に、事務方として長年携わってきました。そうした中で、年々増加していくメンバーの産婦人科医の皆さまの熱いパッションに触れ、私個人のウィメンズヘルスに対する社会的な問題意識も高まりました。
すなわち「男性主導で築かれたビジネス環境や慣習を見直さない限り、〝女性が輝ける社会〞の実現はあり得ず、その見直しのベースになるのはウィメンズヘルスに関する社会的なコンセンサス醸成に他ならない」というような持論を持つに至ったのです。
OC情報センター活動終焉とともに、役割を終えるはずだった当ネットワーク事務局業務に、ボランティア的にいまだ関わり続けているのも、このことがモチベーションになっているからと自覚しています。
微力ながらも、長きにわたって〝事務方〞としてお手伝いしてきたことに対して、非医療従事者では異例な「日本家族計画協会会長表彰」を15年に賜ることができました。その際に、北村先生に対して、「このネットワークが存続する限り、ライフワークとしてサポートさせていただく」とお約束したように記憶しています。
2015年、日本家族計画協会会長表彰受賞時の 後藤氏(右)と本会北村理事長(左)