20年以上のブランクから相談員として復帰して、1年余りが経ちました。相談の電話が鳴ると緊張し、相談LINEが入ると、「何歳の人から?」「どんな相談?」と、したためられた文章の内容や、その後ろに隠れている文字にはなっていないことについて「?」「?」「?」と小首をかしげながら返事を考え、相談業務に従事しています。
30代社会人の男性から「先月アフターピルを服用し、その後出血があったが、また避妊に失敗したので再度飲んだが、まだ出血がない。何度も使うと効果が落ちるのだろうか」とLINEに相談が入りました。彼の言う失敗した性行為から72時間以内に緊急避妊薬を内服したのに出血が見られないため、妊娠したのではと心配されていることは分かりますが様子を見る以外にできることはない状況です。何度も使うことで効果が落ちることはないこと、確実な避妊ができなかったセックスから72時間以内に緊急避妊薬を内服し、妊娠を避けるためにできることはやっているけれど、緊急避妊の効果は100%ではないこと、内服から3週間以上経っても出血が見られない場合は妊娠の可能性があり産婦人科を受診すること、確実な避妊についてパートナーと一緒に考えてみることを勧め、追ってパートナー本人から相談をしてほしいことを伝えました。
前回の緊急避妊薬内服から1か月たたないうちに再度内服が必要となった「避妊に失敗した」のはどういった経緯だったのだろうか、前回とは違った状況だったのか、失敗を繰り返したことについてはどう思っているのだろうか、相談してきたのは男性ですがパートナーの方はどう思っているのだろか、など考えてしまいます。女性の方からの同じ相談なら、確実な避妊のためにピルの内服という選択肢もあることを伝えたいところですが、今回は男性からの相談だったため、「確実な避妊についてパートナーと一緒に考えてみること」の提案までにとどめました。具体的にピル(経口避妊薬:OC)のことを伝えることで、男性から女性にOC服用の強要につながることがあってはいけないと思ったからです。
インターネットで、「アフターピル」「緊急避妊」と検索すれば、さまざまな情報を得ることができます。オンライン診療で受診し、薬を送ってもらうこともできます。また、緊急避妊薬が一部薬局で試験販売を開始して、1年が過ぎました。これは国(厚労省)が、将来的に予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できる仕組みを検討するため、薬局での販売方法などについて情報を集めるための調査研究の一環として行っているもので、2024年の3月で終了予定であったのが、「データ不足」を理由に厚労省が25年3月までの延長を決めました。
緊急避妊薬を入手する方法も複数あり、緊急時には適切に利用しやすくなりました。しかし、これはあくまでも「緊急時の避妊方法」です。必要な人に必要な時に処方できる仕組みが整うことは言うまでもありませんが、頻回に使用するものではなく、定期的な避妊法の代替えにはなりません。より確実で継続的な避妊方法を検討することが大事なこと、性感染症の予防にはならないことなど、しっかり伝わる方法で知らせていかねばならないと相談を通じて痛感しています。