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ニュース・トピックス

職域保健の現場から<59>
高年労働者の健康管理・健康支援

第846号

富士通株式会社 健康推進統括部健康支援室 筒井 久美子

 本連載では職域保健の現場で活躍されている方にさまざまな取り組みをご寄稿いただいています。今回は富士通株式会社 健康推進統括部健康支援室の筒井久美子さんに、同社での高年労働者の健康管理や健康支援などについてご紹介いただきます。(編集部)

会社と組織紹介

 富士通は世界をリードするDXパートナーとして、信頼できるテクノロジー・サービス、ソリューション、製品を幅広く提供して、お客様のDX実現を支援しています。「社員の心とからだの健康と安全を守り、すべての社員が心身ともに健康でいきいきと働くことができる環境をつくりだす」ことをグローバル共通の重要課題として健康経営活動に取り組み、「健康経営優良法人~ホワイト500~」に8年連続で認定されています。
 国内では約7万人の社員がいますが、健康支援室配下の約130名の看護職がその全員の健康を支援しています。私が担当している事業所には保健師、産業医、カウンセラーがおり、約5,600人の社員を担当しています。保健師は、健診事後措置や特定保健指導はもちろん、過重労働対策やメンタル不調者への支援なども行い、社員が安全・安心で健康的に働き、一人一人が良好な業務パフォーマンスを発揮できるよう、産業保健看護専門職の立場で組織・職場・個人を支援しています。

新しい働き方と見えてきた課題

 COVID-19流行に伴い、弊社では「仕事」と「生活」をトータルにシフトして働き方を改革しようと「Work Life Shift」という新しい働き方の概念のもと、社員は働く時間や場所の選択が自由にできるようになり、出社率は約2割になりました。在宅勤務により社員は通勤時間がなくなり、育児や介護と仕事の両立がしやすく、睡眠時間を確保できるようになったというメリットがあります。一方で、在宅勤務の頻度が高い社員ほど1日の歩数が減少し(図1)、メタボ該当者や生活習慣病リスクの増加、筋力の低下などの課題も明らかになってきました。

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高年労働者について

 少子高齢化社会において企業では65歳までの雇用機会が確保され、弊社でも雇用を延長して働く60歳以上の社員が年々増えています。加齢に伴い健康診断結果における有所見率は高くなり、労働災害では通勤途上の転倒による受傷が増えています。高年労働者に対して、健診事後措置では重症化予防の保健指導や治療と仕事の両立支援などの個別対応を丁寧に行っています。また高齢化に加えて在宅勤務の定着化による筋力低下を懸念し、運動の習慣付けやロコモティブシンドローム対策への取り組みを行っています。

運動習慣への取り組み

 全社のイベントとして、毎年春と秋にチームで参加するウォーキングイベント「みんなで歩活」を開催しており、年々参加者は増加しています。また私の所属する事業所では、2017年より健康イベントでロコモ度テストを行い、高年労働者を中心にロコモティブシンドロームの知識普及と筋力低下予防のための取り組みを行っています。測定した社員にアンケートを実施すると「自分が思ったより立てなかった」という感想が多く、測定が筋力低下を実感する機会になっていることが分かりました。その結果を踏まえて保健指導を行うと、口頭のみの指導よりも運動習慣への意識付けや行動変容に効果的であると感じています。数年前からは、来室した社員がいつでもロコモ度測定をできるように、立ち上がりテスト用ボックスなどを常設しており、希望者には経年比較などもしています。身体の変化を見える化することで、継続的に運動習慣の維持や改善への動機付けが行えています。その取り組みの中で、握力が筋力の評価の参考になることが分かり、最近は握力計の活用も始めました。高年労働者だけでなく若い社員にもロコモ度テストや握力測定を実施し、将来に向けただ痩せればいいのではなく、若い頃から意識して身体活動を行い筋力をつけ維持するよう指導しています。

産業保健師として関わる思い

 産業保健師になる前、看護師や大学の助手として働いていた頃、難治性疾患を抱えながら懸命に治療やリハビリを受ける患者さんや家族をたくさん見てきました。健康に働く社員には、自分の健康は自分で積み上げて作っていくものであり「予防できる病気にはならない」ように―と、今、生活習慣を少し変えることの大事さを伝え、将来の生活習慣病を自身で予防できる行動がとれるように保健指導を行っています。産業保健師として、生活習慣病予防の段階で社員に関わることができることに強い意義を感じ、社員が年を重ねても希望通り生涯活躍できたり、退職後も自立して生活を楽しめたりできるように、今後も楽しく効果のある保健指導を行っていきたいと考えています。



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