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はたがや日和~JFPA相談室へようこそ!~【842号】

第842号

 東京都不妊・不育ホットライン相談員 小島 章子

 不妊の話題がメディアで取り上げられたり、SNSで経験談などを発信する人が増えたりした今、不妊治療について多くの情報を得られるようになりました。クリニックや大学病院もそれぞれがサイトを持ち、足を運ぶ前に施設の様子や治療内容を知ることができます。電話か本でしか調べる手段がなかった四半世紀以上前の自分と比べると、その情報量には雲泥の差があると驚きます。
 クリニックでもさまざまなデータを本人に伝えるのが珍しくなくなり、受精卵のグレードや血液検査の数値などの意味をご自身で調べる方が増えたように感じます。一方、情報があふれるあまり身動きがとれなくなって、困惑しているという方もいます。
 フルタイムの仕事と子育ての両立を希望しているもののなかなか妊娠しない、というAさんからのご相談を紹介します。
 電話がつながってすぐ、「どうしたらいいか分からないんです」と話し始められました。
 「いきなり体外受精は希望しない」「しかしもし体外受精をするなら40歳になる前に保険で受けられる回数は受けたい」「仕事と両立できるように通いやすい病院がいい」「職場には話すつもりだがそれでよいのか」「病院の予約はとりにくいと聞くが本当か」「最初から先進医療を受けられる病院に通った方がいいのか」…と矢継ぎ早に疑問に思っていることを話されます。いざ病院に行ってみようと思って調べだしたら、ネットの意見は何を信じたらいいか分からないし、どう選択するのが一番いいのか分からないというのです。
 不安な気持ちを吐露していただいて落ち着かれるのを待ってから、まず先に決めることと、その後でもいいことに分けて順番に考えていきましょうとお話ししました。Aさんはご夫妻で検査を受ける意思はあるというので、最初に病院選びについてお話ししていきました。一般不妊治療を行わないクリニックもあるので、病院のサイトなどで治療内容を確認して、通いやすい地域のクリニックを探してみましょう、という具合です。続いて、その先の治療の内容は先進医療が必要かどうかも含めて、検査の結果を見ないと分からないこと、職場に話すかどうかはAさんの気持ちが最優先であること、相談できる専門機関もあることなどをお話しし、どちらも治療方針が見えてくると具体的にお話しできますね、とお伝えしました。
 当初は調べるほど迷うと混乱していたAさんですが、最後には分からないことが分かってきた、優先順位をつけて考えてみればいいと頭がすっきりした、と明るい声になって終了しました。
 さまざまな情報を得られるようになってかえって混乱してしまったという声は、Aさんに限ったことではありません。ピアである相談員が対応して不妊・不育の悩みを気兼ねなく話していただきたいというのが本ホットラインの一貫した姿勢ですが、加えて、相談者ご自身が納得して治療に向かえるように、考えを整理するお手伝いをするのも役割の一つと考えています。


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