本会の活動は、同じ方向に向かう仲間の存在によって支えられています。「YELL~エール※」は、そんな仲間を紹介する連載(不定期)です。当面はJFPA思春期保健相談士®(以下思春期保健相談士)の皆さんにご登壇いただきます。
※「YELL~エール」…互いにエールを送り合うような関係でいたい、そんな思いを込めて連載タイトルをYELL(エール)としました。
――――近藤さん本日はよろしくお願いします。実は、思春期保健相談士認定カードの発行枚数が間もなく1万を超えるんですよ。
近藤:素晴らしい。
――日頃はどのような仕事をされていますか?
近藤:カウンセリングとアートセラピーをお伝えする仕事をしています。5年ほど前に「ヒーリングアート」というパステルアートに出会いました。ヒーリングアートは、見る人も描く人も癒すことができて、更にセルフヒーリングやセルフコーチングができるセラピーです。
――いつ思春期保健相談士の資格を取られましたか?
近藤:2021年です。
――オンライン開催の2年目ですね。
近藤:そうです。助産師さんが作った“世界のママが集まるオンラインカフェ”というFacebookグループ上で、ママたちを元気にしようという活動を5年くらいさせていただいて、その中に思春期保健相談士の資格を持った方がいらっしゃって、プライベートゾーンのおしゃべり会を開いてくださったんです。それがとても良い会で、お話を聞いたら、受講資格に養護教諭が入っていたので、「あ、私でも取れるかもしれない」と思って挑戦したのです。
――実際に取られてみて、どうでしたか? 3日間の研修×3コースでトータル9日。全部オンラインだったんですよね? 中身は期待した通りというか、思っていたセミナーでしたか?
近藤:こんなにも幅が広いのか! とすごくびっくりしました。私が養護教諭として学んできた時は、やはり第二次性徴のことなどがメインで、「赤ちゃんはどうやって生まれてくるの?」とか、そういう子どもたちの疑問に答えるような、性教育がなされていなかったんです。あと35年前は子どもが携帯電話を持っていなかったので、ネットリテラシーについてもそうですし、今性教育を学ぶということは、本当に幅広いことを知っていないといけないし、そうでないと子どものことを守っていけないのだな―と驚きました。
――気付きがあったセミナーだったのですね。思春期保健相談士の資格を取った後に、それが生かされたとか、ご自身で実感したことなどはありますか?
近藤:以前、教育の現場で性教育の話をしてきたのは、例えば、修学旅行前にお母さんたちを集めて、月経の話をするとか、初経の話をするということぐらいだったんです。でもその後、教育現場を離れてから、ママ友達や、いろいろご縁のある方たちとお話をする際、やはり「子どもの月経ってどうやって教えたらいいの?」とか、「精通ってどういうふうにするの?」という話がでます。子どもって本当はセックスのことなどについてすごく興味を持っているし、今は親が教えなくてもどんどん色々なことを調べることができるので、それについて本当はもっと正しい情報を子どもに説明してあげる必要があると思います。
今回、思春期保健相談士の資格を取らせていただいて、一番最初にしたのが、男の子の精通の話だったんです。それは、男の子を持つママで、自身が女の子のきょうだいしかいない家庭で育ったママや、ご主人しか男性がいないといった環境で男の子を育てなきゃいけないというママたちに、「どうしたらいいの?」と聞かれて、こういうことなんだよっていう話や、セルフプレジャーの話、誤ったやり方だと不妊につながったりするということ、あとは小さい子でも気持ちいいっていうのが分かっちゃうと、いろんなところで触り始めたりする場合があるので、その時の注意点なども含めた話―そういったことを網羅的に話せるようになったっていうのが、ママたちにとってすごく良かったなと思っています。以前は生まれた時のことと、第二次性徴のことぐらいしか話せませんでしたが、思春期保健セミナーで、赤ちゃんのケアや、ママのケア、プライベートゾーンの説明、年代に合わせて順番にどうやって教えていくかということなどを実際にいろんなデータや資料を見せていただいて、「こうやって話せばいいのか!」ということを学べたというのがやっぱり大きかったですね。
――お話しするチャンスは、どのようなシチュエーションですか?
近藤:集まりに呼んでもらうことが多いです。最近では、今年3月に全校生徒30人ぐらいの小さな学校で、卒業をひかえた6年生9人のうち6人にお話をしてきました。「生命(いのち)の安全教育」が始まる前に卒業してしまうので何かできないかな? と話していた時に、通学団で「セックスって何?」って子どもたちが話しているのが聞こえてきたというお母さんがいて、「一度子どもたちと話をしてほしい」と依頼されました。6人の子どもたちと、机を丸く囲んでわいわいとお話をしました。
――活動していることを親御さんはどうやってご存知だったんですか?何か発信していたのですか?
近藤:元々つながりのある方には、思春期保健相談士の資格を取った話はしていました。
――思春期保健相談士という、こういう話ができる人がここにいるよ! というフラッグを自分で上げておられたんですね。
近藤:私には娘(29歳)と息子(26歳)がいるのですが、実は思春期保健相談士を取った時に、娘にももう一回ちゃんと話しておこうと思って話をしたら、「あぁ、私中3の時にそれ聞いた」と言われたんです。卒業する間際に卒業生全員を体育館に集めて、助産師の方が話をしてくださったことがあったらしいんです。「おぉ、すごい瀬戸市!」と思って、息子に聞いたら、息子の時はそんなのなかったと…。これはちょっと瀬戸市の方に聞きに行きたいなって思ってるんですが…。
――「私がやります!」と手を挙げますか!
近藤:「ママ友とか知り合いの人に話すのは私の役目よね」って思ってます。学校とか公のところに行くのはやはりハードルが高く感じたり、私よりもっと知識のある助産師さんの方がいらっしゃったり―というところが、なんか私の中でちょっとハードルになっていて…。
――どうでしょう。私はいろんな人と関わるチャンスがありますけれど、医療行為をする時にライセンスは絶対必要なものですけど、次世代に何かを伝えるのには熱意や経験が私は優先されてもいいかなと思います。そういう意味では、思春期保健相談士である近藤さん、攻めましょう!
近藤:頑張りたいと思います。
――きっとどこかの学校で始められれば、うちもうちもって手が挙がってきたりするのではないでしょうか。頑張っていただきたいなと思っております。
近藤:頑張ります!
――話は変わりますが、このセミナーの卒業生を見ていると、よくコースⅢで同じグループになった人たち同士で、ずっとその後何十年もお友達だったりとか、連絡を取り合ったりとかしているんですが、オンライン開催卒業組は、そういった横のつながりはどんな風にしてとっているのですか?
近藤:私たちの時は、コースⅢの時に、講義の休憩時間やお昼休憩の時などにブレークアウトルームを作っていただいて、そこでちょっとみんなと話せるタイミングがあったんです。たまたま積極的な方がいて、「つながりたいよね」って言ってくださって、画面越しに携帯のLINEのQRコードとか見せ合ったりとかして、まず一部の人がつながったんです。その後やりとりを経て、「みんなつながりたいよね」って話になり、「こうやってFacebookのページを作ったので、皆さんとつながりたいので宣伝してください」みたいなことを事務局の方にお願いして、そこから皆さんに配信していただいたんです。最初は20人ぐらいだったんですけど、LINEのグループが今ちょうど50人いるかな。後からも入ってきてくださったりとか、Facebookも入ってきてくださったりとかして、つながることができたんです。
――オンライン開催だったことで、会場開催のような直接のコミュニケーションは取れなかったけど、こうやってSNSなどでやりとりをするという形で、セミナー参加者同士が集まりたいねとか、つながりたいねって人の集まりだったことも良かったという感じですね。
近藤:そうですね。そして今でも情報交換しています。私は小学校で子どもたちだけに話すというのは初めてだったので、何を伝えようか考えていた時、仲間にメールをして、「こうやって考えてるけどどう思う?」「普段どうしてる?」みたいなのを聞いてみたんです。そしたら「そこって別にこうやって言っちゃえばいいんじゃない?」とか、「私はこうしてる」とか、「私こんな表現してるけど、どう受け取る?」みたいなメッセージをいただけました。
――50人の心強い仲間ができているから、今でも何かやろうっていう時には相談相手としては、一緒に卒業した仲間だし、いいかもしれないですね。
近藤:そうですね。50人みんなで少しおしゃべりしましょうって言っても、 毎回集まるのはやっぱり20人ぐらいなんです。で、最終的に10人ぐらいでわちゃわちゃ喋って、じゃあまたねっていう風にはなるんですけど、でもそうやって1回でも話したりすると、あの人こういうことが得意だった、この人こういうことが得意だったって分かるので、何かあればちょっと相談してみようかとなります。
――20人も!と思いました。1回に20人も集まるのはすごいですね。そういうコアな仲間がいれば、何かあった時はあの人に…で十分いいと思うんですよね。
近藤:そのグループの中に、性教育を仕事としてもずっとやってらっしゃる助産師さんがいて、どこそこでこんなことがあるよとか、たくさん情報を流してくださるんです。
――思春期保健セミナーをきっかけに新たなつながりができたっていうのは良かったです。
近藤:LINE上にも他にも性教育をしていたり、発信していたりする方が多くいるので、私も2つグループに入ってるんですが、やはりそういうつながりのなかで受け取れる情報などは、本当に全然違ってきます。
――特にこのコロナ禍で「つながり」の大切さを実感しました。何かあった時にね、パッと。しかも同じベクトル、方向が一緒の人がいるっていうのはすごい心強いですよね。
近藤:そうなんですよね。
――今の近藤さん、思春期保健相談士の近藤さんは、なりたかった若い頃の夢に結構近付いていらっしゃいますか?
近藤:そうですね。知識が増えたことと、仲間が支えてくれていることで私自身すごく楽しくて、皆さんにお話ししたいっていう気持ちが、ムクムクと湧いてます。
――「楽しい」ってキーワードすごく大事ですよね。仕事なんだけど、あるいは、自分の社会的役割なんだけど、そこに楽しいっていう本人の気持ちがないと、結局相手には伝わらないですよね。性教育だけじゃなく。楽しいって思えてる、今はちょっとハッピーですね。
近藤:そうですね。とてもハッピーです。
――その一助に思春期保健相談士という資格が、もし役に立っているのであれば、セミナーを開催している側としては、すごくありがたいというか光栄です。
近藤:今年1月に、杉村さんにもお会いした、「指導者のための避妊と性感染症予防セミナー(SHRセミナー)」名古屋会場のテーマの1つ、「女性活躍を応援する性教育の実践」。私はもちろん、このテーマを思春期保健相談士として大事だと思ってたんですけど、知ることでアンテナが強化されるのか、その知識を必要としている人に出会ったんです。その人は40代の方なんですが、お伝えできて、そこから自分で気付いて変えて行けたので、何か本当にすごいなと思って感動しました。
――思春期といいますが、その前の幼少期があって、思春期を経て、次の世代に行くわけだから、どこかで何というか不健康な時期があっても、その後に影響してしまうというか。逆を言えば過去に何かあっても、大人になってからそのケアをして、時間は取り戻せないけれど、心の何かを戻せるというのは十分ありますよね。
最後に近藤さんから、これから思春期保健相談士を取ろうという方、あるいは既に取っているけど、ちょっとこれから何しようかなって思っている方に何かメッセージがあれば。
近藤:思春期保健相談士としての活動は、なんかこうじゃなきゃダメっていう決まりはなくて、私らしさってあるのかなと思って。小さな学校で子どもたちとわちゃわちゃしながら話すのって絶対私らしいなと思っていて。その生かし方っていくらでも種類があると思うので、何か人と比べて、「私なんかそんなとんでもないわ」とか、「やったことがないし」とかじゃなくて、自分がこれを伝えたいっていうのが何か1つでもあれば、そこに向かって一歩踏み出していただいたら、きっとその先がつながると思うので、ぜひぜひ一緒に活動できたらと思います。
――いい言葉です。ありがとうございます。今の近藤さんのお話を聞いてて、WBCの大谷の言葉「憧れるのをやめましょう」ってのを思い出しました。憧れてたら超えられないよっていうあれですね。
近藤:本当そうですね。超えるためも重要ですけど、何かやっぱり自分がやりたいと思ったとか、さっきの楽しんでできるとかっていうところに行くのかなって。多分私は大きな会場で何十人とか百人ぐらいの人に向かってマイクで喋るっていうのは、多分私には向いていなくて、だけど、わちゃわちゃしながら「何でも聞いて!」って、「何でも話すよ!」っていう、「全然そんなことで悩まなくていいよ」とか、「心配だったらこんなところにつないであげるよ」とかっていうのを言えるのが私の良さかなって思ってるので。
――でも自分の強みとか良さを自分が分かってるのって、これほど強いことはないですよね。
近藤:そうですね。68期生50人のつながりを取りまとめるのに8人の有志がいて、8人でまず最初にどうするどうする? って話して次いつやるとか、どんなテーマにするとかって話しながら、皆さんにお伝えして、じゃあいついつやるよとか、こんな話するよ、みたいなことをしてるんですけど、 その中の人たちって本当にすごい頑張ってるというか、本当に第一線で活躍してる方たちが多いので、私からすると本当にえーってなっちゃうんですけど、でもすごい温かくそんなことないよって言って、あなたはこれができるし、あれができるしって励ましてくださったりとか…でお話ししてるうちにそうだよねって私しかできないこともあるよねっていうのも思って。
――いい仲間ですね、その8人。
近藤:皆さんすごいですよ。私はもうなんか本当にいっぱい教えてもらっていて。
――でもきっと他の7人も近藤さんからいろいろ教えてもらってることはあると思うんですよ。お互いにね。良かったです。今日は楽しいお話をありがとうございました。
近藤:ありがとうございました。