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第27回松本賞 若槻明彦氏(愛知県)に授与
女性の予防医学、ヘルスケアの発展に尽力

第 829号

愛知医科大学産婦人科学教室主任教授 若槻 明彦氏
愛知医科大学産婦人科学教室主任教授 若槻 明彦氏

 わが国におけるリプロダクティブ・ヘルスの分野において活躍している第一人者に対し、その功績をたたえて贈呈する「松本賞」。その第27回選考委員会が3月20日にウェブで開催された。厳正な審査の結果、今回の受賞者は、愛知医科大学産婦人科学教室主任教授若槻明彦(64)に決定した。

 選考委員会当日は、選考委員ならびに過去の受賞者のうち故人を除く29名を推薦人として、推薦された候補者の功績調書をもとに、厳正な審査が行われ、愛知医科大学産婦人科学教室主任教授若槻明彦氏(64)の受賞が決まった。これで受賞者数は39名。内訳は医師36名、看護職3名となった。

女性の予防医学、ヘルスケアの発展に尽力

 若槻明彦氏は1984年愛知医科大学卒業後、高知医科大学医学部附属病院に入局(産婦人科)。89年から91年まで、米カリフォルニア州アーバインカリフォルニア大学リサーチフェロー。帰国後、95年に高知医科大学医学部附属病院周産母子センター講師、2001年助教授・副部長などを経て、05年に愛知医科大学産婦人科学教室主任教授に就任し現在に至る。11年から18年には同病院副院長、14年から22年3月まで同副学長、19年から22年3月まで同医学部長・医学研究科長を歴任。
 専門は腹腔鏡下手術、周産期医学、更年期医学、性差医学と幅広い。研究面では、①エストロゲンと動脈硬化②骨粗鬆(しょう)症③子宮内膜症④ホルモン療法など女性の予防医学の発展に尽力している。
 中でも、子宮内膜症女性では血管内皮機能が低下していることから心血管疾患のリスクが上昇することがよく知られている。炎症性疾患の子宮内膜症では、子宮内の炎症が閉経時まで慢性的に続くことになるが、このように長期間炎症に晒(さら)されると血管内へのダメージが大きくなり、動脈硬化や心筋梗塞が引き起こされることになる。若槻氏は、さらに、エストロゲン欠乏に伴う脂質異常症や血管内皮機能の低下が心血管疾患上昇の原因であることを解明している。これは、更年期女性のヘルスケアにも深く関 与することであるが、まだまだ産婦人科領域では十分認知されているとはいえない。これに対して、若槻氏は、「閉経前後に見られる、体のほてりや大量の発汗といった症状で産婦人科を受診する患者を診る際、コレステロール値や骨密度の検査をして、そのときの状態と予防法を伝えれば、生活習慣病の発症リスクを低減できる」と力説する。  17年11月に大阪で開催された第32回日本女性医学学会において理事長に就任、現在3期目。日本産科婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本女性栄養・代謝学会、日本産婦人科乳腺医学会、日本エンドメトリオーシス学会の各理事、日本動脈硬化学会の評議員も務めている。
 以上、わが国の女性医学を中心とした医療の第一人者としての氏の優れた研究業績と幅広い学識に加え、女性のヘルスケア等の発展に尽力された功績が高く評価され、今回の受賞となった。

*松本賞は、本会・故松本清一元会長の名を冠した顕彰制度で、わが国のリプロダクティブ・ヘルス分野における第一人者に、その功績を讃えて本会が贈呈するものである。
 選考委員会は、日本産婦人科医会から木下勝之、日本産科婦人科学会から小西郁生、日本生殖医学会から吉村泰典、日本女性医学学会から若槻明彦(当日欠席)、ジョイセフから石井澄江、本会から北村邦夫で構成された(敬称略)。


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