2022年10月27~28日、「令和4年度健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)」が島根県松江市の島根県民会館で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため一昨年は中止、昨年はオンラインを中心に実施されたが、今年は会場での開催となった。主催は、本会ならびに厚生労働省、島根県、松江市、社会福祉法人恩賜財団母子愛育会、公益社団法人母子保健推進会議。「目指そう!笑顔でゆったり子育て つないで広げる支援の輪、みんな親子の応縁団」をテーマに、講演、シンポジウム、功労者の表彰が行われた。
式典の冒頭、加藤勝信厚生労働大臣(代読=山本圭子子ども家庭局母子保健課長)があいさつし、2023年度のこども家庭庁の設置や、こども基本法の制定、第8次医療計画の策定に向けた検討、産後ケア事業の推進など、子ども政策をめぐっては様々な動きがある。その一環として、成育基本法に基づく基本方針についても現在見直しの検討を進めていると語り、各分野の施策の相互連携を図りつつ、子どもの権利を尊重した成育医療等が提供されるよう、横断的な視点での取り組みも推進していくと表明。母子健康手帳の見直しとともに、マイナンバーカードを活用したデジタル化の推進に向けた議論も進めていると述べ、これらの取り組みを通じて、各市町村や医療機関における切れ目のない包括的な支援の提供を推進していきたいと語った。
またこの大会では、各主催団体から22年度母子保健・家族計画功労者への表彰が行われ、日本家族計画協会会長表彰として個人51人1団体(22年・秋号既報)に授与された。 受賞者を代表して、荒田尚子氏(国立研究開発法人国立成育医療研究センター周産期・母性診療部長)へ北村会長から賞状が手渡された。(写真1)
特別講演では、荻田秀和(りんくう総合医療センター産婦人科部長)が登壇、「奇跡のすぐそばにいるということ~産科医からみた子育て~」と題した講演が行われ、お産と子育てを取り巻く現状と問題点について言及し、その解決のヒントとなる最新の科学的根拠などが紹介された。
写真1 日本家族計画協会会長表彰の様子
翌28日は、本会が主催する「令和4年度家族計画研究集会」が開催され、「子宮頸(けい)がん予防、今からでも遅くない~HPVワクチン積極的接種勧奨再開についてご存じですか~」をテーマに講演とパネルディスカッションが行われた。(写真2)
講演「子宮頚がんを巡って今、何が起こっているか」では、北村会長が子宮頭がんに関する話題をQ&A形式で紹介し、改めて知識を確認する場になっていた。次いで行われた講演では、講師の上田豊氏(大阪大学大学院医学系研究科産科婦人科学講師)が、「改めてHPVワクチンの大切さを考える」をテーマに、現在のワクチンの接種状況などを行動経済学の理論を用いて分析し、HPVワクチン再普及のための施策について解説した。接種対象者自身や保護者が行う意思決定については「同調効果」や「現在バイアス」、「利用可能性ヒューリスティック」などが働いていることを説明し、それらを考慮して、施策を講じるべきとの見方を示した。現在各自治体で行われている個別通知は一定の効果を上げているとしたうえで、さらなる具体案を提示。医療者やそれに相当する専門的知識を有する者からの適切な情報提供は、周囲の状況によらず接種が進む可能性を示唆した。また、ワクチンを接種した方が情報を周りに伝えることの有用性についても言及し、親しい間柄にある友人や家族による情報拡散によって、今まで以上に広い普及もあり得ると語った。またパネルディスカッションでは、新型コロナ感染対策によって客席からの質疑こそかなわなかったものの、進行・講師間で本会市谷クリ二ックでの診察時のエピソードなどを交えた軽妙なやり取りが交わされ、「今回講演を聞いた皆さんがインフルエンサーとなって、各地でワクチンの有効性を発信していって欲しい」と観客に向けたメッセージも呼びかけられた。
写真2 パネルディスカッションの様子
今回は3年ぶりの現地開催ということで、会場全体が活気にあふれていた。式典で主催団体の代表者や来賓の面々が顔を並べるさまは壮観で、本大会の前身「家族計画普及全国大会(1956年)」から続く系譜を感じさせる厳粛さに包まれていた。丸山達也島根県知事が各団体の挨拶や祝辞に熱心に耳を傾ける姿が印象的で、母子保健に対する関心の高さをうかがい知ることができた。受賞者の控室は、打って変わって和やかなムードに包まれ、そこかしこで互いの晴れ姿を写真に収める光景や、久々の再開で思い出話に花を咲かせる様子、初対面の方々が積極的に親睦を深める場面などが見られた。本会展示ブースにも、各賞の受賞者を始め、多くの来場者の方々に足を運んでいただき、会全体も盛会裏に終了した。23年度は栃木県宇都宮市で、11月9~10日に開催される。