令和4年度健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)が「目指そう!笑顔でゆったり子育て~つないで広げる支援の輪、みんな親子の応縁団~」を大会テーマに、島根県松江市において開催されますことを心からお慶び申し上げます。日頃、母子保健・家族計画や「健やか親子21」の推進にご尽力されておられる方々が全国各地から一堂に参集され、盛大に全国大会が開催されますことを嬉しく存じております。
また、このたび、本大会において栄えある表彰をお受けになられる皆様方は、長年にわたって母子保健・家族計画の分野において多大なご尽力をなされた方々であり、ここに深く感謝の意を表しますとともに、衷心よりお祝い申し上げます。
本大会の前身は、「家族計画普及全国大会」。実は、1955年10月に東京で第5回国際家族計画会議が開催されましたが、これを機に毎年全国から関係者が集まり、全国大会を開催してはいかがかという本会の提案が実現した形で、56年11月に第1回家族計画普及全国大会が当時の厚生省、東京都と共に開催され、厚生大臣表彰などが行われたとの記録が残っています。
66年からは全国母子衛生大会と合併して「母子衛生家族計画全国大会」に、70年には「母子保健家族計画全国大会」、2001年には「健やか親子21全国大会(母子保健家族計画全国大会)」と名称が変更され現在に至っています。この間、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大もあって、一昨年度は大会史上初めて開催を断念せざるを得ませんでした。昨年度は岩手県盛岡市において、ハイブリッド形式での開催となりましたが、今年度は島根県、松江市をはじめとする関係者のたゆまぬご尽力により、ご当地での開催にこぎ着けることができましたことに対し、深甚なる敬意と感謝を申し上げます。
一方、わが国のSRHRを検証いたしますと、直近では、長年の懸案であったHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の積極的接種勧奨が本年4月から再開されました。
2013年4月にHPVワクチンの定期接種がスタートしたものの、当時接種をきっかけに多様な症状が出現。因果関係ははっきりしませんが、副反応で悩む方々が多数いたことから、国はやむなく同年6月から積極的接種勧奨の差し控えを全国に通知しています。
その結果、対象年齢の7割近くもあった接種率が一挙にゼロに近づくなど、SRHRを脅かす事態となっていました。あれから既に9年が経過しています。
この間、15年8月12日時点で名古屋市に住民票のある、中学3年生から大学3年生相当の年齢の女性を対象に実施した、いわゆる「名古屋スタディ」を機に、ワクチン接種による副反応の可能性が極めて低いことが明らかになるだけでなく、20年10月にスウェーデンで行われた大規模疫学調査研究で、17歳未満でのHPVワクチン接種で子宮頸がんを88%減少させるという有名医学雑誌での報告などが引き金となったのか、国は、積極的接種勧奨再開と合わせて、1997年度から2005年度生まれのHPVワクチンが届きにくかった女性たちに対しても、3年間を限度に無料で接種できるような取り組みを開始することになりました。
この辺りの事情については、10月28日10時30分から、島根県民会館中ホールにおいて開催する本会主催の家族計画研究集会「子宮頸がん予防、今からでも遅くない~HPVワクチン積極的接種勧奨再開についてご存じですか~」の中で詳細に報告させていただくこととなっておりますので、ぜひともご参加いただきますようお願いします。
2019年12月に、中国武漢市で初めて確認されたCOVID-19。わが国においても、20年1月16日に国内最初の感染者が確認されて以降、既に3年近くが経過しようとしています。
この間、繰り返されるCOVIDー19の波は、既に7回目となっており、わが国に限らず、世界各国での人的交流の制限や経済活動の低下などは未曾有の事態となっています。
それに加えて、本年2月24日に突然始まったロシアによるウクライナ侵攻。21世紀には想像することのできない戦争が勃発し、我々を震撼させています。テレビ・メディアから流れる女性や子どもたちの殺戮の映像には胸が裂けるほどの驚きと怒りを覚えています。そこには、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利:SRHR)の向上など望むことさえできません。大国による軍事侵攻によって、生活必需品の値上げは後を絶たず、食糧危機に陥っている国々もあります。COVID-19の収束は言うまでもなく、軍事侵攻の早期終結を願わずにはおれません。
本会が長年にわたって早期承認を求めてまいりました経口妊娠中絶薬についても、昨年12月に承認申請がなされています。
現在、安全性と有効性について科学的な審議が進行中と伺っていますが、可及的速やかに審議が終了し、経口妊娠中絶薬が日本人女性の手に届けられることを願ってやみません。
SRHRを巡っては、緊急避妊薬の薬局販売(OTC化)を進めるための議論が進展していることについても触れずにはおれません。本会はNPO法人HAPと協働で昨年12 月に全国の薬剤師対象の調査を実施し、OTC化を前向きに推進するための参考資料として本年4月28日に開催された「第20回医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」に提供させていただきました。
緊急避妊薬のOTC化については、日本の産婦人科医の9割近くが、①転売②コンドーム使用率の低下による性感染症リスク増大③緊急避妊薬服用後の妊娠(異常妊娠含む)への対応が遅れる④避妊に協力しない男性が増える⑤性暴力への悪用、DVへの気付きや相談機会の喪失―などOTC化に何らかの懸念があると回答していますが、既に世界では90か国を超える国々でOTC化が実現しています。年齢制限が必要か、若い人に提供する際の費用、その後の確実な避妊法選択へと行動変容を促せるか―など解決すべき課題は少なくありませんが、医療機関と薬局との有機的な連携を図りながら、計画外の妊娠を回避したいと願う多くの女性たちにとって入手しやすい環境を整備することも、SRHRの課題の一つだと考えています。
本会としても、SRHRを後退させることなく取り組んでまいる所存ですので、今後も皆様方からのなお一層のご支援とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。