福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授らの研究グループは18日、虐待などの不適切な養育「マルトリートメント(マルトリ)」を受けた子どもは、遺伝子の一部に変化が生じ、その度合いによって対人関係に関わる脳の機能に影響が及ぶとの研究成果を発表した。トラウマなどの新たな治療法の開発につながる可能性があるという。
研究では、過去にマルトリートメントを経験した子ども(以下、マルトリ児)24人(平均12.6歳)と非マルトリ児31人(平均14.9歳)を対象に唾液を採取し、唾液中DNAからゲノム全体のDNAメチル化(DNAの後天的な変化。DNAを構成する塩基のある部分がメチル化すると、遺伝子の働きが制御される)を網羅的に解析した。
この内、対人関係の形成・維持にとって重要とされている「オキシトシン遺伝子」に着目し、そのDNAを調べたところ、マルトリ児では非マルトリ児に比べ、オキシトシン遺伝子のDNAメチル化率が1.7倍高いことが分かった。
また、このDNAメチル化はマルトリ児の中では、特に5~8歳時の身体的虐待と関連があると確認された。
研究成果は、英国科学誌Nature(ネイチャー)系「Translational Psychiatry(トランスレーショナルサイキアトリー)」電子版に掲載された。
【関連リンク】
マルトリーメント児に多く見られるオキシトシン遺伝子のDNAのメチル化は対人関係に関わる脳ネットワークに関与(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)
防ごう!まるとり マルトリートメント
A multi-modal MRI analysis of brain structure and function in relation to OXT methylation in maltreated children and adolescents(Translational Psychiatry)