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ニュース・トピックス

コロナ禍にあってもSRHRを推進
~2021年度本会事業計画・収支予算承認~

第805号

写真 定例理事会の様子
写真 定例理事会の様子

 本会の2020年度第2回定例理事会が3月24日に開催され、21年度の本会事業計画ならびに収支予算が承認された。以下に本会の事業計画書「はじめに」から主な内容を掲載する。

新型コロナウイルスの猛威に直面した2020年

 目前に立ちはだかる困難を、先人たちはどのように克服してきたのだろうか。
 新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)の拡大が、日本は言うまでもなく世界中を混乱に陥れた2020年。本会も例にたがわず、コロナ禍にあって1954年創設以降、未曾有の経営危機を経験することとなった。2020年度に計画 されていた各種事業を可能な限り実施しようと役職員一同一丸となって努力してきたが、結果は我々の予測をはるかに超えていた。

コロナ禍がもたらした本会事業への影響

 年間100近くのセミナーを企画立案しているが、リアルでの開催は「SRHセミナー(指導者のための避妊と性感染症予防セミナー)」などわずかで、オンラインでのセミナーの開催を余儀なくされるなど日常が一変した。
 地方自治体、医療機関、看護教育機関、産業保健などをターゲットに制作頒布している各種教材や研修事業についても、現場がコロナ対応に追われてか、健康教育支援事業や健診事業が停滞し、本会の事業収益を伸ばすことがかなわなかった。
 新型コロナウイルスワクチンの医療従事者に対する先行接種が2月から開始されたとはいえ、集団免疫を獲得できるレベルに達するには、解決しなければならない課題が山積しており、いまだ収束のめどは立っていない。

公益事業の一部休止本紙はペーパーレスへ

 経営的に厳しいこのような状況下、21年度はいまだ経験したことのない大胆な計画の立案を余儀なくされている。一例を挙げれば、公益目的事業の一部を休止することである。
 02年以来2年ごとに実施してきた「男女の生活と意識に関する調査」は、わが国における家族計画・避妊分野に貴重な資料を提供してきたが、費用がかさむことから調査をいったん休止せざるを得なくなった。同様に、啓発冊子「妊娠中から考えるお産のあとのあ なたと赤ちゃんの健康」についても無料配布を当分の間休止する。また、1982年から運営してきた「思春期・FP(家族計画)ホットライン」については、ここ数年相談件数が激減していること、特に男性からの相談に「性的通話」が目立っていること、若者たちが 電話よりもSNSを使った相談に移行していることなどを考慮し休止とし、現代の若者たちに受容される新たな相談のあり方を模索したい。これら諸事業については、本会の経営状態が安定するようになった段階で再開することを検討したい。
 また、54年4月に機関紙「家族計画」(当時)の第1号が発行されて以来67年目を迎えているが、アフターコロナ、ウィズコロナにおける「新しい生活様式」として、原則ペーパーレス化を進めることとしたい。

SRHR向上の手を緩めない

 その一方で、コロナ禍にあってもセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)向上の手を緩めてはいけない課題がある。
 緊急事態宣言が発出された2020年4月前後において、自粛を余儀なくされたことが原因してか緊急避妊薬の入手が困難だったとの声が届いている。同年4月には厚労省からの事務連絡として「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用い た診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が発信されているが、オンライン診療と併せてスイッチOTC化の是非についても積極的な議論を進める時期に来ているのではないだろうか。
 HPVワクチンについても20年10月に朗報が飛び込んできた。スウェーデンにおける大規模調査研究の結果としてHPVワクチンが浸潤性子宮頸がんの発生を減少させることが明らかにされたのだ。わが国では13年4月に定期接種が開始されたものの、副反応疑い例が 続出し6月から「積極的接種勧奨」が控えられて間もなく8年を迎えようとしている。それまでは定期接種対象年齢の70〜75%ほどが接種していたにもかかわらず、接種率が1%未満になってしまった。
 積極的接種勧奨再開を急ぐとともに、この間、個別通知を受け取ることができなかった未接種者へのキャッチアップを公費負担できないかの議論を進めていく。併せて、20年7月に製造承認された9価のHPVワクチンが本年2月に発売されたものの、任意接種にとど まっている件については定期接種への可能性を探っていきたい。
 人権としての家族計画には避妊だけでなく安全な人工妊娠中絶が含まれていることは言を俟(ま)たない。わが国の場合、子宮頸管拡張・子宮内容物除去術と吸引法が中心であるが、世界で約80か国・地域で承認されている経口妊娠中絶薬のわが国への導入に向けて日本産科 婦人科学会・日本産婦人科医会など学際的な団体と協力しながら努めてまいりたい。

柔軟性とスピード感を持って取り組む

 また、すべての収益事業においても展開方法の再検証や「効率の健全化」「収益力拡大」などを目的とした対策を早急に講じる必要がある。事業の「質」「サービス」「アクセス」の改善を常に念頭に置き、その時々の潮流に対応できる柔軟性とスピード感を併せ持った活動に全力で取り組 み、それにより得た「信頼」を礎にした経営基盤を強固なものへと作り上げていく所存である。

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