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産後の性生活と変化する夫婦のかたち―産後セックスレス・二人目不妊・産後の避妊―

2024年10月 更新
産後の性生活と変化する夫婦のかたち―産後セックスレス・二人目不妊・産後の避妊―

出産という大仕事を終え、育児に追われる毎日を過ごしていると、
なかなか性生活について考えたり、夫婦で話す機会はないかもしれません。
頭の片隅では思っていても、日々の生活に追われ、
それどころではないという方もいらっしゃると思います。
ここで一度、これからの性生活について考えてみませんか?

セックス=子づくり?? ~産後の夫婦にとってセックスとは~

 実は、妊娠・出産を機にセックスレスになったという方は少なくありません。理由は、「仕事や子育てに疲れて、セックスどころではない」「パートナーのことを異性としてではなく、家族として見てしまう」「快楽を求めるセックスに罪悪感がある」「出産後、再開のきっかけがつかめない」などさまざまですが、中には「子どもをこれ以上つくる予定がないから」という声もあります。

 「セックスは子どもをつくるための行為」であって、「子どもが欲しいからセックスする」「(これ以上)つくるつもりがないからセックスしない」と考えている方がいらっしゃいますが、セックスはそれだけのための行為ではありません。セックスには、パートナーとの愛情を互いに確かめる行為、体だけではなく精神的な結びつきも深める行為という側面も持っています。

 とはいえ、産後すぐは精神的にも肉体的にもそんな余裕はないし、女性はこの時期は母性が優先されるので、産前に抱いていたパートナーに対する気持ちにも変化が生じ、求められても受け入れられないことがあるでしょう。そんなときは、きちんとそれを言葉で伝え、理解してもらいましょう。ただし断り方によっては、相手を傷つけてしまい、夫婦の溝を生んでしまうことがありますので、相手の気持ちを考えて伝えることが大切です。お互いが相手を思いやり、双方が合意した上で行為に臨むことが望ましいといえます。

 互いに求めることがなく、何となくセックスレスになってしまった方は、一度夫婦でじっくり話し合ってみてはいかがでしょうか? パートナーは日々育児で疲弊しているあなたを思って、自分の気持ちを押し殺しているかもしれません。お互いの思いがすれ違い、離れて行ってしまうことがないよう、一度お互いの気持ちを確認してみましょう。話すことに抵抗がある方は、手紙やメールで気持ちを伝えるも良し、時には「セックス=夫婦のスキンシップの延長」と考え、性交にこだわらず、お互いの体に触れ合うことから、距離を縮めてみても良いでしょう。

 セックスをしないことは決して悪いことではありませんが、お互いがそれを望んでいるかどうかはきちんと話をする必要があります。その上で、それぞれの夫婦が納得できる選択をすることが重要です。

二人目不妊と産後の避妊

二人目不妊と産後の避妊

 産後の性生活を再開された方には、もう二つ知っておいてほしいことがあります。それは「二人目不妊」と「産後の避妊」です。

 出産年齢が高年齢化している今日では、加齢により二人目を妊娠しづらくなっているケースが多く、特に高齢出産の基準となる35歳を過ぎると、卵子の数と精子の数の減少とともに妊娠率も大きく下がります。また若い人でも、一人目の出産後に子宮筋腫になったり、感染症にかかったりすることで、妊娠しづらくなることがあります。二人目ができずに悩んでいる方は、まずは夫婦で話し合った上で、婦人科などの専門医に相談しましょう。

 「子どもにきょうだいをつくってあげたい」という気持ちは、とても素晴らしいことですが、絶対ではありません。一人っ子でもたくましく、立派に育ちます。目の前のお子さんにたっぷりの愛情を注ぎ、健やかな成長を支えてあげることが最も大切なことであることを忘れないでください。

 また、「産後しばらくは生理(月経)もないので、妊娠はしないだろう」と思い込んで、避妊を怠る方がいらっしゃいます。一般的には産後3か月以上たってから排卵が再開するといわれていますが、個人差がありますので、それより早く再開する可能性もあります。排卵は月経前に起こりますので、実際、月経を見ないまま再び妊娠をしてしまうというケースがあります。予期せぬ妊娠を防ぐためには、産後すぐの性交であっても適切な避妊が必要です。産後すぐはコンドームが適していますが、産後6週を過ぎれば、IUD(子宮内避妊具)の使用が、授乳していなければ産後3週(授乳している場合は産後6か月)からピルの服用が可能になります。夫婦できちんと話し合い、自分たちに合った避妊と家族計画をしましょう。

 先にも述べたように、セックスは夫婦にとって重要で特別な行為である一方で、夫婦の結びつきがきちんとあれば必須ではありません。多様な生き方、価値観が許容される現代だからこそ、こうあるべきという考えに縛られない、それぞれの「夫婦のかたち」を築いていくことが大切です。

(監修:一般社団法人日本家族計画協会会長 北村 邦夫)

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