医療従事者の意見
医療施設の外でさまざまな方法で妊娠中絶することをSelf-Managed Abortion(以下SMA)と呼ばれています。SMAを試みた患者を少なくとも一人以上診察したという米国内のクリニックは、2012年から4年間で調査全体の12%から18%に増加しました。
その後、COVID-19パンデミックの中で中絶を提供するクリニックが減り、これと同じくして中絶を厳しく制限する司法の議論がいくつかの州(特にテキサス州)で再燃しました。これに対抗するように、経口中絶薬をオンラインで提供する非営利NPO法人(エイド・アクセス/Aid Access)が現れ、患者からの問い合わせが激増しています。
この状況を見てテキサス大学などの研究者らは、SMAの患者に接する可能性のある医師、看護師、カウンセラー、コーディネーター、事務職など46人を対象に、薬の安全性や当事者の対処能力などについて意見聴取しました。
その結果、医師・看護師とその他専門職の間に考え方にかなりの相違があり、例えば安全性の捉え方では、出血の対応や感染リスク、中絶無事終了の確認をどうするのかなど、リスクが極めて大きいという一方で、正しく使えば他の経口薬と同じで、偽物を使わない限り、使用上の安全性は高いなどの意見。さらに、正確な妊娠週数の把握、自身の病歴・血液型など最小限の知識が必要で、全ての女性がこれらを熟知しているとは限らない―などさまざまな意見がありました。これらの結果から研究者らは、SMAに関わる患者から支援依頼があったときに対応するため、中絶薬の安全使用、施行時の不具合の対処、精神的スティグマの緩和、法的規制などの考え方を医療従事者間で意思統一しておくべきで、当事者がクリニックのどの専門職にも相談できる応急体制、例えばテレメディスンを利用した遠隔対応を整備することが必要になってくるだろうと述べました。
参考 Baldwin A, et al. Qualitative Health Research. 2022 Vol.32(5)