新年度が始まりました。早いもので相談業務に従事して5年目に入ります。本会の相談員は多様なバックグラウンドを持ち、専門とする分野もさまざまなユニークな集団です。
ある日のこと、杉村センター長の「相談員さんそれぞれに、これが得意! と胸を張って言える分野があると良いよね」という一言が胸に突き刺さりました。得意分野とはまだ程遠いものの、かねてから障害がある方(以下障害者)への性教育に関心がありました。性教育は、ただでさえ「寝た子を起こすな」という言葉に縛られ、殊に、障害者を対象とした性教育はタブー視されてきました。一方で、2013年に施行された障害者総合支援法の基本理念の中では、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるもの」と明示されています。
さらに14年に国が批准している障害者権利条約にはセクシュアル・ライツに関する規定があることからも、個々の障害者への適切な性教育は国として保障されなければなりません。
数は少ないですが、本会へも障害がある思春期世代の親御さんから相談が寄せられることがあります。
10代男子。知的障害と視覚障害あり。特別支援学級の同級生の彼女ができたが、スキンシップが激しい。学校では性教育もされていて、コンドーム装着の練習もしている。養護教諭からは、「賛否両論あるだろうが、その場その場で具体的な指導をしていくしかない」と言われている。親としてはどうしていこうか…。
10代女子。発達障害と知的障害あり。通信制高校と福祉施設で職業訓練を受けている。学校で彼氏ができ、直後より性行為に夢中になった。学校の先生、相談員との連携や家族の話し合いのもと、いったんは別れることになったが、結局は隠れたところで連絡を取り合い、再び毎日性行為をしているという事態が発覚した。問い詰めれば大暴れする。どうしたら良いのか…。
どちらも容易ではない事例です。
幸いなのは、どちらも既に担当の先生や養護教諭、相談員など当事者をサポートするための連携が取れている点でしょう。障害の有無にかかわらず、性教育で伝えるメッセージは同じです。人間関係や恋愛に関して、月経・妊娠のメカニズム、避妊法 etc...。とはいえ、特別なニーズへの配慮と工夫も不可欠になります。理解が促せるように、発達段階や理解力に合わせた教材や伝え方の工夫、そして性教育実施後の評価。一度で終わらず繰り返し行うことがとても大切です。
私は大学院時代の研究で、軽度知的障害者への性教育のニーズに関して当事者インタビューを行ったことがあります。結果、「自分の家族が欲しい・作りたい」というニーズがありました。恋愛がしたい、パートナーが欲しいという欲求は誰しもが抱き得るもの。支援者としては、当事者の方々がいかに「安全に」ニーズと向き合えるか、個別性に応じた性教育の試行錯誤が必要となるでしょう。
まだまだ障害者の方への性教育は現場経験が浅いため、学ぶ機会を求めていきたいと思っています。