ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第71話>末松議員が質問主意書提出
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫
民主党(当時)の末松義規議員が、1998年9月2日、「低用量経口避妊薬の認可に関する質問主意書」を提出している。質疑応答を拝見することで、当時の政府がピルの認可についてどのような姿勢であったかを知ることできる。Q&Aで以下、概略をまとめた。
Q1. 日本では、医師によるピルの処方が禁止されているが、その医学的根拠は何か。
Q2. 現在、中用量ピルの使用が認められているのに、低用量ピルが認められないのはなぜか。
Q3. 世界保健機関(WHO)、国際家族計画連盟(IPPF)等の国際機関や、米国食品医薬品局(FDA)をはじめとする世界各国政府は既にピルの安全性と有効性を認めているが、日本政府および中央薬事審議会(中薬審)はどのように認識しているか。
Q4. 中薬審は、既に8年以上ピルの審議をしている。通常の医薬品の審査は平均18か月といわれている。この異常な長さについて合理的な理由はあるのか。
Q5. ピルの審査で、海外の臨床試験データは使用されているのか。その位置づけは。
以下、答弁の概要である。
Q1とQ3について、ピルについては、WHOにおいて有効性と安全性に関する諸報告がまとめられていること、米国などの諸外国で販売が許可されていることは承知しているが、現在中薬審で審議が進められている。したがって、現時点で低用量ピルの有効性及び安全性についての認識を述べることは差し控えたい。
Q2について、中用量のホルモン配合剤については、その承認に当たって避妊をその効能又は効果として認めていないものである。
Q4について、中薬審では、低用量ピルの品質、有効性および安全性に関し、ピルの使用による健康被害に関連する副作用に関する調査又は報告及び低用量ピルの使用が後天性免疫不全症候群等の性感染症の病原体の感染の拡大に与える影響についての公衆衛生上の観点からの議論も含め、慎重に審議を行い、また、この間、必要に応じ、承認申請を行っている者に対し審議に必要な資料の作成を求めているところである。承認申請に係る審議に要している期間については、これらの理由によりご指摘のような期間を要しているものと考えている。
Q5について、海外の臨床試験データの使用については、承認申請を行っている者から申請書に添付される資料の一部として海外の臨床試験データが提出されており、審議会においては、これらを含め承認の可否に係る審議を行っているところである。
これら、提出された質問に対する政府側の答弁には、斬新さが欠けており、審議が異常に長引いている理由を探るには不十分であった。