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はたがや日和~JFPA相談室へようこそ!~【846号】

第846号

 思春期・FP相談LINE/避妊のためのピル&アフターピル相談室 相談員 來田 美鈴

 HPVワクチンのキャッチアップ接種が来年3月で終了する。3回の接種を全て公費負担で受けるには、9月中(すなわち今月中)に1回目の接種を終える必要があるが、対象者にこの大切な情報が届き、実際にどれだけ接種をしてくれるだろうか。接種を迷っているという声は、JFPAの相談にも寄せられる。中には、保護者の副反応に対する不安が強く、接種に踏み切れないというケースもある。
 つい先日の相談は、対象年齢に該当するご本人からだった。彼女は、情報は知っていたが母親が難色を示していたため、接種することはなかったそうだ。しかし、最近は大学でも接種を勧められることも多く、いよいよ無料で受けられる期限が迫ってきたこともあり、尋ねてきたのだ。彼女は、これまで母親とこの件について深く話をしたことはなかったそうだが、改めて子宮頸がんの現状とワクチン接種の有効性を伝えると、急ぎ接種をする方向で話してみますと言ってくれた。2022年に積極的推奨が再開されたとはいえ、その接種率はまだまだ低く、欧米諸国の80%には遠く及ばない。
 私は、JFPA相談員の他に、地域で「こども食堂」の活動をしている。その活動を通して、2年前からは、12人のウクライナ避難民の方々への支援も行っているが、そのほとんどが女性と子どもだ。戦火から逃れ、必死の思いで日本にやってきた女性たちが来日間もない頃、私は助産師として何かできることはないだろうかといろいろ尋ねてみた。これまでの大変な経験と、言葉も文化も違う環境での生活に、体調の不安や月経などに関連したトラブルを抱えていないか、下着やナプキンなどの衛生用品は足りているか、子どもたちのことで心配なことはないかなど、思いつく限りのことを尋ねてみた。すると、最初に返ってきた言葉は、「14歳の娘に、HPVワクチンを受けさせたいが、日本で受けることはできるか」という内容だった。ウクライナで接種を予定していたところに、突然のロシア侵攻が始まり、受けられないまま日本にやってきたが、このままチャンスを逸してしまうのではないかと心配。できれば早く娘には接種をさせたいとのことだった。
 正直、私は彼女の言葉に、HPVワクチンに対する認識の差が、日本と海外(ウクライナ)ではこれほど違うものなのかと驚いた。すぐに、市役所に確認し、日本でも接種ができることを伝えると、彼女はとても安心した様子を見せた。日本では、いまだにHPVワクチン接種に不安を感じている保護者は少なくない。一方、ウクライナ人の母親は、かつて経験をしたことのない困難の中でも、適切な時期に接種を受けることは必要だと思っている。この差はとてつもなく大きいと感じた。
 海外の方と接することで感じた違和感をそのままにせず、私は改めて、HPVワクチンの正しい情報を丁寧に伝えていかねばと、思いを新たにした。


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