本会の活動は、同じ方向に向かう仲間の存在によって支えられています。「YELL~エール※」は、そんな仲間を紹介する連載(不定期)です。当面はJFPA思春期保健相談士®(以下、相談士)の皆さんにご登壇いただきます。
※「YELL~エール」…互いにエールを送り合うような関係でいたい、そんな思いを込めて連載タイトルをYELL(エール)としました。
――自己紹介・自己アピールをお願いできますか。
市川:全国約4万人の養護教諭(保健室の先生)のうち約100人しかいない男性の養護教諭です。全国の有志による団体「男性養護教諭友の会」の会長も務めています。東山書房より「男性養護教諭」を上梓し、理解の輪を広げる取り組みをしています。日ごろ学校では、保健室で子どもたちの心身の健康を守り育みながら、セクシュアリティ教育や心の健康教育に力を入れています。
――児童・生徒さんは絶対少数である(珍しい)男性養護教諭に戸惑いはありませんでしたか。それと市川さんご自身が男性ゆえに困った経験はおありですか。
市川:別の取材で、当時赴任していた小学校高学年の女の子たちが、「男性の養護教諭に話しにくいとかありませんでしたか?」という質問に、「最初は驚きましたけど、話しやすいし、やっぱり『保健室の先生』だったから今は全く気になりません。保健の授業でいろいろ教えてくれるので、生理の相談も私はできます」と答えてくれました。もちろんこういった子どもたちばかりではないかと思うのですが、子どもたちから見れば、周りの大人が想像している以上に、私は「養護教諭」なんだと思います。困ったことはいろいろありますが、その都度目の前の子どもたちや保護者の方、同僚や上司と話し合って乗り越えてきましたし、これからも必ずそうしていきたいと思っています。
――いつ思春期保健相談士を取得されましたか(相談士歴何年?)。
市川:2016年1月に認定いただいたので、相談士歴は8年(9年目)になりました。
――相談士になろう(もしくは思春期保健セミナーを受講しよう)と思われたきっかけをお聞きしてもよろしいですか。
市川:知的障害特別支援学校に勤務していた頃に、子どもたちが抱える性に関する課題の大きさに気付き、自身の力不足を事あるごとに感じていました。そんな中、特別支援学校での性教育に力を注がれている先輩の養護教諭である思春期保健相談士に出会い、様々なアドバイスをいただきました。子どもたちの課題に寄り添い、支えとなるためにはより専門的な学びが必要だと思い、先輩の後を追って、思春期保健相談士になるためのセミナーを受講しました。
――セミナーを受講されて、どんな感想を持たれましたか。
市川:思春期保健に関する最先端の知見を学ぶことができたことと、他職種で同じ思いを持つ方とつながれたことが最高でした。最先端の知見を集中的に学ぶことができたことは、その後刻々と変化していくセクシュアリティに関わる問題をより深く、より早く理解して、自身の考えを持つことにとても役立ちます。それが日々の実践に生かされているようにも感じます。そして、実践に取り組むときには、他職種の仲間たちと情報交換したり励まし合ったりして楽しく向き合うことができています。
――取得して資格を生かせている場面を紹介していただけますか。/資格持っていて良かったことなどをぜひ!
市川:今、学校教育も大きな変化を迎えています。子どもたちが性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、全国の学校において「生命(いのち)の安全教育」が展開されています。教材が文部科学省より配信され、各学校が工夫して取り組んでいることと思います。しかし、目的に向かって教材を有効活用し、子どもたちにとって効果的な学習につなげていくには深い理解が必要です。この点、思春期保健セミナーで学んだことの中に、この課題に直結した内容は多く、より理解を深めながら、より積極的に実践を積み重ねることができているように感じています。また、子どもたちが将来、各ライフステージにおいてセクシュアリティについてどのような問題を抱えやすいかについても学んだので、未然に防ぐ学習を、保健教育の枠組みの中でいかに進めていけるか考え、実践しています。学校保健委員会などを通じて保護者や地域の皆さまと対話をしながら、子どもを真ん中において、これからも充実させていきたいと思います。
そして、思春期保健相談士であることから、セクシュアリティ教育に関わる研修の講師として各地にお招きいただくことも多いので、実践をお聴きくださる方にも応用可能な形で伝えるように心掛けています。そのような機会に、思春期保健相談士の仲間が増えたり、仲が深まったりすることも醍醐味(だいごみ)の一つですね。
――相談士としてのこれからの活動予定や、希望をお聞かせください。
市川:学校におけるセクシュアリティ教育の充実や、生命の安全教育など、予防教育に力を入れていきたいと考えています。一方で、養護教諭という職の特性上、子どもがセクシュアリティに関わる課題を抱えたり、つまずいたりしたときに、SOSとして私に伝えてくるところから支援が始まることもたくさんあります。校内組織はもちろん、外部の他職種の方との連携を視野に今後も丁寧な対応を心掛けていきたいと考えています。求めがあれば全国どこへでも研修講師として伺います!
――相談士を目指す方へのメッセージお願いします。
市川:私にとって思春期保健相談士はゴールテープであるのと同時に、スタート地点でした。セクシュアリティの学びのゴールかと思えば、始まりであることにも気付きました。でもそれは、暗く深いものでは決してなく、たくさんの出会いとつながる喜びに満ちあふれた明るい世界につながっていました。ぜひ皆さんも共に学び合える、思春期保健相談士仲間になりましょう!楽しみにお待ちしていますっ!