女の子と若年女性の居場所
「わたカフェ」の現場での気づきから
8月7日、IKE-Biz としま産業振興プラザ(東京都豊島区)で、若年女性の支援を行っている「わたカフェ」の活動報告会が開催された(主催=公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン)。会場には専門職や女性支援・若者支援に携わる方が訪れた。
わたカフェで相談事業に携わる臨床心理士橋本理恵氏が、相談事業、スタッフ間での座談会、利用者インタビュ―やアンケートなどを通じて明らかになったことを発表した。
近年の若者の傾向とスタッフの姿勢
同施設が2020年8月に開設されてからの4年間で、登録者数は400人、利用者数は延べ4600人であった。現在は平均すると日に14人ほどが利用している。
開設以来、徐々に利用者は増えているが、若者への支援にはさまざまな工夫が必要であると橋本氏は語る。
スタッフが日常、気に留めていることとして、訪れる若者と接する時に、明らかに支援をするという雰囲気を出さないようにしているという。「支援ばかりが目立つ」と警戒され、若者の足が遠のいてしまうからである。
また、若者は相談すべき相手かどうかに注意を払っていて、自分の情報が学校や親に知られてしまうことを恐れたり、相談時に否定される・話を遮られるなどして自分を丸ごと受け入れてもらえる感覚が持てなかったり、時計を見るなどして忙しそうにしたりすると、相談することをためらってしまうことが、利用者インタビューから明らかになった。
また、困難な状況にあっても、自分が相談すべき状態なのかも分からないことが、大人に比べて多いということも分かっているため、この年代ならではの配慮が必要となる。
こうしたことを一つ一つクリアしてきたことが、結果、わたカフェが若者の受け入れてもらえているという感覚を感じられる場所になっていると語った。
自己効力感を醸成する居場所が必要
続いて、利用者への社会関連性指標に関するアンケートの結果も踏まえて、若年女性にとっての居場所の意義についても述べた。
わたカフェへの相談内容は精神的な悩みに関するものが多く「死にたい」「生きているのがつらい」と訴える利用者が多い。これについては、相談先がある、家族との交流がある、趣味を持っているといった社会とのつながりがある程度満たされていても変わることはなく、利用者がつらさを抱えている現状が見えている。
また、「自分は社会の何か役に立つことができると思いますか?」という質問に対して、利用者の4分の1が、自分は社会に役立たないと回答している。いわば自己効力感が低い状態である。自己効力感が低い利用者は、現実に人と会う頻度や相談相手・緊急時の支援者が少ないという傾向にある。
橋本氏はこれらの結果から、利用者は、現実の世界で共感し、受け入れてもらえるような安全・安心な居場所と相談相手を求めており、受け入れられることで自己効力感を高めるのにつながっていると語った。そして、わたカフェがこの4年間、若年女性に居場所と相談先として機能してきたと結んだ。
※社会関連性指標…地域社会の中での人間関係の有無、環境との関わりなどにより測定されるもので、人間と環境のかかわりの質的・量的側面を測定する指標
報告会では、豊島区長 高際みゆき氏、西武信用金庫理事長 髙橋一朗氏、法政大学現代福祉学部助教 岩田千亜紀氏も登壇し、産官学の視点からそれぞれに今後の女性支援の在り方について語った。また、会の終わりにはパネルディスカッションも行われた。
この報告会の模様は、下記のサイトからご覧いただけます
▶▶▶【開催報告】報告会「女の子と若年女性にとっての居場所~『わたカフェ』の現場での気づきから」(8/7)プラン・インターナショナル
「わたカフェ」とは
15~24歳の女性を支援するために、2020年8月、東京都豊島区に開設されたカフェ。運営は、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンが行っている。
安心・安全な居場所の提供、生理用品・性に関するパンフレット・冊子などの配布をするほか、所属する保健師、助産師、臨床心理士、ソーシャルワーカーら専門職が、性に関する悩み事を含めさまざまな相談にも対応している。
今後も若年女性のエンパワメントを高めるために事業を展開していく。
わたカフェでは、生理用品や、各種女性の健康支援のための資材を提供している。また、情報提供のための資料も配布しており、本会の教材「U18F」「女子のためのthe100Answers」「啓発用コンドーム」なども必要に応じて利用者に渡している。
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