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虐待死の傾向分析結果が公表

厚生労働省より「子ども虐待による死亡事故等の検証結果等(第16次報告)」が公表された。この報告は、年度内に厚労省が把握した児童虐待の死亡例を検証・分析し、今後の虐待防止策へ向けて国や地方公共団体への提言をまとめているものである。今年公表された第16次報告では、ネグレクトが最多の虐待類型になったほか、揺さぶられ症候群も依然確認されるなど、虐待死の現況が明らかになった。

ネグレクトが最多死因に

2020年9月30日、厚生労働省は「子ども虐待による死亡事故等の検証結果等(第16次報告)」を公表した。それによれば18年度内で確認された虐待死は、73人(64例)となり、心中以外で死因となった虐待類型はネグレクトが最多となった。これまで虐待類型は身体的虐待が最多であったが、今回はネグレクトが25人(46.3%)となり、身体的虐待の23人(42.6%)を上回った形だ。ネグレクトの内訳は「遺棄」が最多の11人(44.0%)、次いで「家に残したまま外出する、車中に置き去りにするなど子どもの健康・安全への配慮を怠る」10人(40.0%)などとなり、この2項目は前年度よりも増加していた。

頭部外傷の約40%が揺さぶられ症候群

直接の死因では頭部外傷が最多の10人(28.6%)となり、うち4人(44.4%)は乳幼児揺さぶられ症候群(疑い含む)であった。また第11~16次報告における揺さぶられ症候群の死亡事例28件を見ると、加害動機は「不明」を除くと「泣きやまないことにいらだったため」が9件(32.1%)と他の動機に比べて多かった()。虐待者に過去の虐待行動がないケースも多く、揺さぶられ症候群が加害意識がなくとも、ふとした際の揺さぶり行動から子どもを死に至らしめるものであることがうかがえる。

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図 第11~16次報告における乳幼児揺さぶられ 症候群による死亡例の具体的理由

児童福祉とDV防止の連携を

第16次報告では新たな取り組みとして、分析可能な第5~15次報告のデータを元に、実母がドメスティック・バイオレンス(DV)を受けている事例の傾向分析を行った。

その結果DVがある場合の特徴として「10代での妊娠・出産の経験のある実母が多く、子育てへの支援が必要と考えられる家庭が多いが、地域社会や親族との接触に乏しい」「実母自身の社会経験の少なさや、パートナーとの関係性等が相まって、安定した家族関係を築くことに難しさを抱えている状況が考えられる」「DVの加害者により被害者が社会や親族から孤立させられてしまうことがあり、実母がDVを受けている家庭においても、実母を含む家族が社会的に孤立しがち」などが見られるとした。そしてDVが子どもに与える影響を念頭に、これらの特徴を認めた場合にはDVの可能性を疑って対応するなど、児童福祉とDV防止の連携の取り組みが必要になるとしている。

妊娠期からの支援が必要

今回の報告では被害者は0歳児(40.7%)、加害者は実母(46.3%)がそれぞれ最も多かった。実母が妊娠期・周産期に抱えていた問題の上位3種は「遺棄」35.2%、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」24.1%、「妊婦健診未受診」22.2%となり、妊娠期に支援を受けないまま出産、遺棄に至っているケースが多いことが分かった。そして妊婦の状況や変化を把握できるような支援があればこの結果は違った可能性もあるとし、地方公共団体には今後、支援が必要な養育者へ適切に支援を届けられるようなアウトリーチ型の施策実施など、妊娠期からの支援の強化が必要だとしている。報告内ではこの他にも、妊娠から出産までの切れ目のない支援や児童相談所及び市区町村の相談体制の強化と職員の資質向上、関係機関の連携強化など、国と地方公共団体に対して、実施すべき施策の提言を行っている。

(2020年(令和2年)11月号1面より)

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