講師からのメッセージ!
吉村 泰典 氏(受胎調節実地指導員認定講習会・出生前診断担当)
本会開催「受胎調節実地指導員認定講習会」の講師陣にお話しを伺う本コーナーですが、今回は「出生前診断」の講義を担当する吉村泰典氏より寄稿いただきました。いのちに寄り添って支援している私たちが、これからどのような視点をもって社会を築いていくべきなのか、吉村氏のメッセージが込められています。ぜひご一読ください。(編集部)
出生前診断を考える
高齢妊娠が増え、妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新型出生前遺伝学的検査への関心が高まってきています。生まれてきた子どもに障害があった時、また出生前診断を実施し染色体異常があった時、身体にさまざまな障害をもちこれから先どのように生きていけるのか、自分達がいなくなってこの子どもはどうなるのかなど、不安に哂されます。子どもが障害をもって生まれてくるのは、自分達のみならず子どもにとっても不幸であると考え、中絶を選択するカップルが多くなっています。
誰もが子どもに障害があったとしても、その子どもが幸せに生きていってほしいと考えますが、現実の社会を見ると障害をもって生まれてきた子が必ずしも幸せな人生を送ってきたとは思えません。障害のある子どもが不安なく生きていける社会ならば、いのちの選択をしなくてもよいのかもしれません。社会の人々が障害に対して正しい知識を持ち、障害のある人と共に生きる社会であるならば、障害そのものが障害でなくなっていきます。
障害のある子どもらの声に耳を傾け、そして権利を守り、安心して暮らせるような社会を築くことができれば、障害を多様性として、個性として捉えることができるようになります。個性は、性のみならず、障害のある、なしを超えます。健常者は、障害のある人から実に多くのことを学びます。親たちは障害のある子どもの成長に励まされ、彼らの優しさに触れ、障害に対する価値観を変容させ、人を幸せにする力により癒されていく自分に気付くことになります。障害のある子どもが安心して生きられる社会は、誰もが生きやすい社会です。
2023年8月21日
吉村 泰典
<講師プロフィール>
慶應義塾大学名誉教授/
吉村やすのり生命の環境研究所 所長
吉村 泰典(よしむら やすのり)
岐阜県出身
1975年慶應義塾大学医学部卒業
1983年米国ペンシルバニア病院research fellow
1984年米国ジョンズホプキンス大学instructor
1986年藤田保健衛生大学医学部産婦人科専任講師
1990年杏林大学医学部産婦人科助教授
1995年慶應義塾大学医学部産婦人科教授
【主な学会活動】
2007年日本産科婦人科学会理事長(2011年まで)
2010年日本生殖医学会理事長
2011年日本産科婦人科内視鏡学会理事長
その他数多くの学会理事歴任
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