妊娠中から考える お産のあとの あなたと赤ちゃんの健康
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日本では、かつて月経不順などに使われるホルモン量の多いピルを医師の責任の範囲で避妊目的に処方していましたが、1999年、ようやく「避妊薬としてのピル」の使用が認められるようになりました。錠剤を口から飲む避妊薬のため、別名「経口避妊薬」と呼ばれます。ピルは1960年にアメリカで初めて承認され、使用されるようになってすでに60年余りになります。現在世界では1億人以上の女性が、確実な避妊法の一つとして使用しています。避妊目的で使われるピルは、時に数年以上にわたり継続して飲む場合があるため、ホルモン量をできるだけ減らし、体への負担を少なくする必要がありました。そのためにさまざまな研究や改良が重ねられ、現在の低用量ピルが生まれたのです。低用量ピル使用による1年間の失敗率(妊娠率)は、飲み忘れのない理想的な使用の場合0・3%以下で、飲み忘れがあった場合も含めて使用したときは9%とされています(12ページ参照)。●ピルで避妊ができる理由妊娠している女性は排卵が起こりません。妊娠中は胎盤から黄体ホルモンと卵胞ホルモンが分泌されているため、排卵、受精、着床という妊娠に備えての性周期がなくなります。これは性周期をつかさどる間脳・脳下垂体・卵巣が休んでいる状態になっているからです。この原理を応用した避妊法がピルです。黄体ホルモンと卵胞ホルモンの両ホルモンの配合剤であるピルを飲むと、ちょうど妊娠と同じような状態になり排卵が抑えられます。また、子宮に働きかけて内膜の増殖を抑制するため、たとえ受精したとしても受精卵を着床しにくくする働きや、子宮頸■■管から出る粘液を変化させて精子の子宮内への進入を防ぐ働きがあります。このようにしてピルは避妊効果を確実なものにしています。●低用量ピルを利用するにはホルモン剤であるピルは、要指示薬といって医師の処方箋なしには入手することができません。医師がピルの使用が適当と判断した場合に初めて処方されます。●服用法最もポピュラーなタイプは月経の初日、あるいは月経開始後最初の日曜日から飲み始めます。月経開始5■■日以降から飲み始めた場合は、初めの7日間はコンドームなど他の避妊法を併用してください。低用量ピルには21錠タイプと28錠タイプがあります。21錠タイプは、毎日1錠ずつ21錠飲んでは7日間休むことを繰り返します。7日間休薬したら8日目から新しいシートに移ります。28錠タイプは、28錠目が終わった翌日から新しいシートに移ることを繰り返します。月経のような出血が起こります。28錠タイプの場合は、最後の7錠の偽薬を飲んでいる間に起こります。現在、子宮内膜症に伴う疼痛改善剤・月経困難症治療剤が発売されていますが、これらも避妊効果を期待できます。 21錠タイプは、ホルモン入り錠剤を21錠飲み終えると、休薬期間中に避妊目的のピル(経口避妊薬)※一般的に低用量ピルとは卵胞ホルモン量が50μg未満をいいます30~40μg黄体ホルモン卵胞ホルモン50~150μg1000~2000μg48~100μg低用量ピルは1錠中に含まれる卵胞ホルモンの量を少なくしたもので、中・高用量タイプに比べ、卵胞ホルモンは1/1.5〜1/2量以下となっています。また黄体ホルモンも作用を強めて量を少なくしています。低用量ピル(避妊目的)と中・高用量ピルのホルモン量低用量ピル(避妊目的)中・高用量ピル          低用量ピルのホルモン量比較ピルの働き15間脳・脳下垂体ピル・精子の進入を防ぐ・ 子宮内膜に受精卵が着床しにくくなる・排卵をなくす卵巣・子宮

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