機関紙

<29>内臓脂肪計でメタボと向き合う特定保健指導 パナソニック東京汐留ビル健康管理室 垣崎沙緒里

2016年03月 公開

職域保健の現場から 29

内臓脂肪計でメタボと向き合う特定保健指導

パナソニック東京汐留ビル健康管理室  垣崎 沙緒里


はじめに

 私は、2012年にパナソニック健康保険組合に入社し約2年半、健康管理センターで、パナソニックグループの被保険者に向けた各種健診や保健指導に携わってきました。14年からは、総合電機メーカー、パナソニック㈱の中で、照明や住宅関連の商品を扱う事業所の健康管理室に異動し、社員約2500人の健康管理を担当しています。
 特定保健指導は事業所の理解を得て、定期健診事後措置の位置付けで、就業時間内に実施しています。制度導入より約7年が経過し、過去に指導を受けた対象者も増え、対象者に新たな気付きを促すのが難しくなる中で、特定保健指導の進め方に工夫が必要と感じていました。


内臓脂肪計導入の背景
 今年度特定保健指導の進め方を検討しているとき、内臓脂肪が測定できるパナソニック製品があることを知りました。
 測定が非常に簡便であり、内臓脂肪の数値化が対象者の新たな気付きにつながることを期待し、特定保健指導でこの「内臓脂肪計」を試験導入しました(図1)。

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実際の活用方法
 今年度特定保健指導は、定期健康診断終了後の15年9月よりスタートしました。対象者には事前に内臓脂肪を測定してもらい、初回面談(集団)は、メタボリックシンドロームと内臓脂肪の関係性を取り入れた指導内容とし、内臓脂肪測定結果の説明を行いました。
 また、その後のフォローとしては、対象者全員への定期的なメール支援に加え、12月に積極的支援対象者の中間評価として、個別面談時に内臓脂肪測定を行い、体重・腹囲や生活習慣と併せ、変化を確認しました。
 6か月後に当たる本年3月には、最終評価として対象者全員に、内臓脂肪測定と面談を行う予定です(図2)。

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内臓脂肪計の有効性
 積極的支援・動機付け支援合わせて315人の対象者のうち、初回面談には148人が参加し、内98人に内臓脂肪測定を実施しました。
 特定保健指導も7年目を迎えややマンネリ化しており、ここ数年初回面談実施率は経年的に低下傾向ではありましたが、今年度は前年度と同じ47%の方に初回面談を実施することができました。また、保健指導の継続率や終了率についても、引き続き集計を進めております。
 内臓脂肪測定を受けた対象者の感想には、①ショックであった、危機感が募った②生活習慣改善の必要性を感じた③目標がさらに具体化される、励みになる―と大きく三つのカテゴリーの意見が見られました。
 健康行動の必要性を感じていない方や、現状の取り組みが本人の思うような内臓脂肪値の結果につながらなかった方から①②のような感想があり、また健康増進行動への意欲が高い方に、③のような感想が伺える傾向がありました。
 これらのことから、内臓脂肪計を活用し有効と感じた点は、大きく以下の3点であると考えます。
 第1に"特定保健指導参加への動機付け"です。内臓脂肪が数値として認識できることで「面白そう」「やってみたい」という気持ちが対象者に生じ、保健指導への参加意欲につながったと思います。
 第2に、"内臓脂肪見える化によるメタボの客観視"です。特定保健指導でも、メタボリックシンドローム基準を、腹囲85㌢以上(男性)が内臓脂肪100平方㌢以上としていますが、これは腹囲周囲の筋肉や皮下脂肪なども反映してしまい、内臓脂肪量のイメージにつながりにくい点がありました。今回、内臓脂肪を測定することで、自分が本当にメタボに該当するかどうかが明確に表示され、対象者の新たな気付きにつながっていました。
 第3に、"メタボ改善に向けた動機付け"です。今回の初回面談では、内臓脂肪をイメージ化できている対象者に、内臓脂肪が健康に及ぼす影響や、現在や今後影響を受け得る健康状態について説明しました。これにより、メタボリックシンドロームの予防・改善のためには、単に体重を減らすことだけではなく、内臓脂肪の減量こそが肝要であることを再認識いただくとともに、食事・運動面からの具体的行動目標設定を支援できました。
 また、中間や最終のタイミングで内臓脂肪を測定すると、変化の確認が自分の健康行動の総合的な評価や継続の励みになり、より自分に合った行動目標の設定にもつながっていました。


今後に向けて
 今回の特定保健指導において内臓脂肪を数値で表現したことは、対象者の新たな気付きにつながっており、内臓脂肪計に指導教材としての有効性を感じました。
 特定保健指導が2期目に差し掛かり、過去に指導を受けた対象者を中心に、特定保健指導に関する知識をすでに有している方が増えています。今後も特定保健指導を進めていく上で、さまざまな機器やノウハウを適切に活用しながら、変化していく対象者の背景や特徴を捉えた指導内容、行動変容につながる保健指導を心掛けて参ります。
 また、対象者それぞれが自分なりの健康との向き合い方を見つけられるよう、引き続き研鑽を続けていきたいと思います。

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