<25>私学から生涯保健活動への可能性を見出して 横浜女学院中学校・高等学校・横浜学院幼稚園 小澤美奈子
職域保健の現場から 25
私学から生涯保健活動への可能性を見出して
横浜女学院中学校・高等学校・横浜学院幼稚園
養護教諭(専修)保健師 衛生管理者 小澤 美奈子
職場の特色
本校の保健活動領域は、学校保健全般と教職員の産業保健管理を合わせた、非常に幅広いものです。私がこの職に従事して20年が経過しますが、この執務を取り巻く変化は非常に大きいものでした。
私のこれまでの活動を振り返りながら、学校保健の現場と、そこに従事する教職員の保健管理・健康推進の課題についてご紹介したいと思います。
保健管理の経緯と大きな転機
私は私学の保健師として、学校保健と併せて教職員の産業保健的な管理にも携わっています。まず職員健診ですが、この実施者は設置者であるので、公立校においては養護教諭は必ずしも直接的に関わるものではありません。私学である本校では、保健師・衛生管理者の立場から、私がこの健診計画の立案・実施・健診票の管理を担っています。学校には校医がおりますが、教職員の健康管理には必ずしも関わるわけではなく、この形態では事後措置として保健管理上の関与が困難です。しかし、本校では早くから校内実施での業者委託を導入し、法的に定められている結果の個人通知も行っており、健康推進・改善への取り組みについては、設置者による衛生管理者と産業医の選任をもって衛生委員会を設置することにより整備を進め、この課題はクリアしています。
学校職員における産業保健管理は、衛生委員会という組織があってこそ、法令遵守や責任体制等を踏まえた介入整備を高めていくことができます。現在では公立においても県立高校を中心に校内整備が進められてきていますが、個人情報保護の観点から人事権を持った管理職は構成メンバーには入ることはできません。
本校の健康管理の取り組み
表を踏まえた私の活動は、①危機管理②ヒューマンエラーの予防システムづくり③結核・インフルエンザ・感染性胃腸炎を中心とした感染症対策④労災二次健診に加えての特定健診・特定保健指導対応⑤行事等が重なる多忙な時期にこそ目立つ心身の不調を来した教職員の調整―などで、現在はメンタルヘルスチェック導入の整備等々、課題は尽きません。
表 活動に関係する法規ほか 1.産業保健関係 2.学校関係
以上宿泊行事を含めて生徒同様 |
保健事業における教育現場の良さは、特にタイムリーな対応が求められる感染症対策で、適切な対応協力と理解が得られやすい点です。また同僚のメンタル不調にも、教職員なので観察力は鋭く理解されやすい点も挙げられます。反面、感情労働的要素も多いので、その点がストレス要因となり、また加齢や運動不足なども加わって、肥満とともに耐糖能低下、脂質代謝異常につながっていきやすいことがあります。
教育現場を取り巻く状況と課題
本校の生徒は現在非常に落ち着いていますが、子どもたちの傾向というのは、全国的にも共通して時代の変化や影響を色濃く反映するものです。安倍政権による「いじめ防止対策推進法」を受けての対応整備や、平成24年度の「児童生徒の健康状態サーベイランス」事業報告では不登校、経済的事情からの高等学校中途退学、特に女子のメンタルヘルス関連、夜型のライフスタイル、自尊感情での指摘が取り上げられています。教師間でのネットワークをもって見えないものを捉える「心の目」が必要です。
現在の私の関心は、法的な整備を追い風に昨今取り上げられている「データヘルス」「コラボヘルス」です。これまでのデータの蓄積から問題を可視化し、教職員の健康課題の対策と個別支援を含めたシステムづくりを、教育現場でどう進めていくことができるのか。個人的にも非常に興味深く、可能性を感じているところです。
また特定健診・特定保健指導に対しては、本校ではいち早く私学事業団が実施している訪問指導委託制度を導入し、すでに4年が経過しようとしています。
このように私は学校保健を軸に「生徒だけでなく教職員・保護者・その他学校に関係するすべての人々」を対象とした「生涯保健」に携りながら、学校というフィールドでこそできるヘルスプロモーション的展開と可能性に希望を持って、日々、学びを深めています。