<34>ひまわりレディースクリニック(神奈川県横浜市) 植田 啓
植田 啓 |
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その34
継続は力なり
ひまわりレディースクリニック(神奈川県横浜市)
植田 啓
学校の先生はスゴイ!
性教育をやっていて、私には向いてないと思った時期があります。子どもたちの注意を引くのが苦手、魅力的に話せない、そんな自分にコンプレックスを感じたこともあります。常日頃、子どもたちと接している学校の先生は「本当にスゴイ!」の一言です。
それでは、私の性格や得意とすることはといえば、性格は真面目で、几帳面。根性があり、何事も投げ出さない。そんな性格にぴったりの活動とは?...と今も自問自答しています。
思春期ネット
夫の転勤や留学、子育ての関係で住まいを転々としていて、2003年に横浜で開業する前は、長野県松本市に2年間住んでいました。現在も夫が松本市にいるため、週末はそちらで過ごすことが多くあります。
そのような事情から松本市との絆が強く、そこで知り合った助産師や養護教諭の仲間たちと06年に「思春期ネット」という会を立ち上げました。
「小児期や思春期の子どもたちの健康を守り、体と心の健やかな成長を支援することを目的とする非営利団体」という会則をつくり、年2回の学習会を現在も続けています。直近では第23回思春期ネットをこの年末に開催し、子どもの貧困について学び、語り合いました。
会の発足当時は、年会費を千円集め、年2回の学習会に加えて、ニュースレターも年2回発行。総会では、会計監査報告とその承認も行うなど、かなりきっちりした活動をしてきました。
しかし、だんだん疲れてきて、このままでは続かないと思い、途中から会則を変更して緩やかな会にしました。年会費無料、学習会案内はメールで送信するようにして、学習会への参加費(資料代)500円を収入源に、何とか続けています。
学校医委員会
一方、神奈川県では、神奈川県産科婦人科医会の中に学校医委員会という組織があり、「養護教諭向け産婦人科講習会」を毎年開催しています。
学校医委員会発足のきっかけは9年前にさかのぼります。当時、神奈川県医師会は、県教育委員会の学校保健研究委託事業として、学校教職員向けの啓発冊子を毎年度作成していました。08年度は、産婦人科へ作成の依頼があり、5人の産婦人科医が分担執筆して「STD(性感染症)に気をつけて」という冊子を作成しました。なお、当時は性感染症のことをSTD(Sexually Transmitted Diseases)と表現していましたが、現在は、STI(Sexually Transmitted Infections)といいます。
せっかく作った冊子を配布して終わりにするのではなく、さらに活用してもらうために、09年12月に「STD学習講演会」を開催しました。この発想がよかったのだと思います。これが第1回となる「養護教諭向け産婦人科講習会」となり、それから毎年開催して、今年度で9回目を迎えました。
継続は力なり
年1~2回の企画なら簡単だと思われがちですが、これを何年も続けるとなると、マンネリになったり、意欲が低下したり、いつの間にか自然消滅したりすることがあると思います。
継続する力、諦めない気持ち、投げ出さないという覚悟、それがあれば組織としての活動は続けられるのです。
思春期ネットは細々とですが、これからも年2回の学習会を続けていきます。そのうち、役員の誰かが定年退職すれば、時間と気持ちの余裕ができて活動を発展させることができるかもしれません。
神奈川県産科婦人科医会の学校医委員会は、年1回の講習会が軌道に乗ってきたので、次は性教育の活動を展開したいと考えています。
その手始めに、17年10月に「第1回性教育指導セミナー〈神奈川版〉」というのを企画してみました。性教育に関心のある産婦人科医など、約30名が参加してくれました。
焦らずに、一歩一歩少しずつ、ゆっくりでいいので続けることが大切!
思春期ネットであいさつをする植田氏
【今月の人】 植田 啓
1989年、信州大学卒業。甲府共立病院などで産婦人科研修。97年に渡米し、98年に相模原協同病院、その後非常勤となり、2003年、ひまわりレディースクリニックを横浜に開院。思春期ネット会長、神奈川県産科婦人科医会学校医委員会委員長など。