<7>いつか 埼玉医科大学地域医学・医療センター 高橋幸子
高橋 幸子 |
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その7
いつか
埼玉医科大学地域医学・医療センター 高橋 幸子
"いつか"役に立つ!
中学生対象の性教育講演会では「正しい知識があなたを守る。いつか必ず役に立つ! ライフスキル講座」というタイトルを使っています。「この"いつか"がとっても大切で、今日お話を聞いて、今日すぐに役に立つ人もいるかも知れないね。でも、1か月後、半年後、1年後、5年後、10年たってから、今日のお話が身に迫ってくる人もいるかも知れません。でも、皆さんの長い人生の中で、必ず"いつか"関わってくる問題。今日はそう思ってお話に参加してください」と語り始めます。
私が講演会に伺うタイミングが、誰にとってもぴったりであるとは限りません。対象は小学生から大学生までいます。もうセクシャルデビューしている子もいるかも知れない。まだまだ自分には無関係と思っている人もいるでしょう。しかし、性行動の世界に飛び込む前に、「一度は立ち止まって」「自分の頭で考えて」「選択する」チャンスを与えたい。そんな講演会にしたいと思っています。
段階的な性教育を!
中学生の3年間は、心も体も大きく変化する時期です。1年生では二次性徴や性的マイノリティーについて、2年生では命のつながりについて、と心を耕しておいてもらいたい。「性=生」といわれるように、生きることを豊かにするためには、性のことをおろそかにすることはできません。おおらかに、前向きに性を捉えられるように心を耕す授業をしておいてほしいと思います。3年生に語り掛ける私の役目は「でもちょっと待って! 性には危険なこともあるんだよ」というストッパー役なのではないかと思っています。
埼玉に語れる人を
中学1年生から3年生の3年間に、いろいろな大人にいろいろな角度からの話を聞くチャンスがあるといいと思います。時間がかかるかもしれませんが、全ての中学校で学年ごとに積み重ねの性教育ができるような埼玉県になってほしいと思い活動しています。
現在の埼玉県は「県内全校でやってみましょう」となったとき、語れる人が不足しているという状況です。語れる人を育てるための勉強会が必要になってきており、語れる人を育てる場として、2008年に立ち上がった彩の国思春期研究会の「西部支部」を今年4月に立ち上げました。「将来養護教諭になったら、私を講演会に呼んでね」というつもりで養護教諭を目指す大学2年生に講義をしたところ「私も語れる養護教諭になりたいと思った」という感想が多く、「語れる人を育てる」ことの必要性を強く感じ、西部支部の発足に結びつきました。
3か月を1クールとして活動しています。1か月目に講演会を聞いて、2か月目にディスカッションを行い、3か月目に講演の内容と自分の実体験を交えた3分間のスピーチを作る、という方法で「語れる人」を育てていきます。先日スピーチの回が行われましたが、大人の私たちが圧倒されるような素晴らしいスピーチを作ってくれた学生さんもいました。
「語る」という道具を、3か月に一つずつ身に着けていく彼女たちが、どんな語り手に育ってくれるか、とても楽しみです。大人だって負けていられません。
彩の国思春期研究会 西部支部へようこそ!
子どもたちが"いつか"の日を迎えるために語る。"いつか"語れる私になる。二つの"いつか"をかなえるため、仲間になりませんか。彩の国思春期研究会・西部支部では仲間を募集中です! お申し込み、お問い合わせは左記まで。
seibusainokuni@gmail.com
中学校での性教育講演会
【今月の人】 高橋 幸子
2000年、山形大学医学部卒業。2003年、埼玉医科大学病院産婦人科助手となる。2013年11月より埼玉医科大学地域医学・医療センター助教。埼玉医科大学病院産婦人科思春期外来担当。彩の国思春期研究会西部支部会長。